【東京商工リサーチ掲載記事】今年は「熱中症に注意を!」では済みません。<社会保険労務士 津田千尋>
罰則付きの義務化が始まります。だからこそ、少し頑張りましょう!というメッセージを込めてお届けします。
ニュースでも目にされている方も多いかもしれません。
今年は、『職場における熱中症対策の強化について』が、報道されることが多くなりました。
2025年6月1日から、特定の作業環境下での熱中症対策が罰則付きで義務化されます。
職場での熱中症リスクが年々高まる中、政府は企業に対し、冷房設備の整備や定期的な水分補給の徹底、作業時間や環境の見直しなど、具体的な熱中症対策の強化を求めている状態です。
なぜ、今、熱中症対策ですか?
根拠となっているデータは下記になります。
熱中症による死亡案件は年々増えてしまっており、2023年の実際の数値は31人となってしまっています。特に、熱中症については、最初の初期対応が重要とされているものの、(実際の熱中症の症状をみると、よくわかるのですが)、体調不良の症状と見た目あまり変わらないので、気が付きにくい。本人も周囲も気が付きにくく、治療が遅れてしまう、というケースが多いのが悲しいかな現状です。
屋外の業務のケースは、すでに熱中症対策に着手していることが多いのですが、むしろ、屋内の業務(作業)について、熱中症対策が取られていない、または、きっと大丈夫、という思い込みが強いような印象をうけます。
・クーラーが付いているから大丈夫
・室内の作業だから大丈夫
・窓を開けて換気をしているから大丈夫
具体的に何が求められているのか

罰則はありますか?
熱中症をふくめて、広く災害対策については会社に義務がありました。現時点においても、労働安全衛生法の第3条に規定されているとおり、事業者には「労働者の安全と健康を確保する義務」が課されています。安全衛生法第119条は、労働災害を防止するための措置に関する規定で、この規定に基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります。
このため「熱中症」と明記・明言はなくとも、労働者の安全と健康を確保する義務を果たすことが、もともとは必要でした。
これにくわえて、2025年6月1日の、法改正(労働安全衛生規則の改正)により、「熱中症対策をとること」自体が罰則付きで義務化され、下記のように、事業主側で大きく3点の対応が必要となります。
・体調異変時の報告体制の整備
・重篤化を防ぐための対応手順の策定
・上記内容を労働者に周知すること
対象条件:
気温31度以上 or WBGT(暑さ指数)28度以上
かつ「1時間以上の連続作業」または「1日4時間以上の作業」
とはいえ、報告体制や重篤化を防ぐための対応手順の作成といっても、すぐには思いつかず、といったところが多いかと考えます。手順(フロー)の例として、下記のようなものも公表されています。

出典元:第174回 安全衛生分科会資料(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001385232.pdf
具体的な対応策として
報道の前後も含めて、社労士事務所へ相談いただいている内容としては、
・労働時間の前倒し(サマータイム制の導入)
・休憩時間の変更(暑い時期のみ休憩時間を多く確保する)
・休日日数や労働時間の時期による変更(変形労働時間制の導入を含む)
などがあります。
また、屋外の現場作業の多い、建設業等の業種においては、すでに、多くの取り組みが行われており、関係取引先(元請会社)からの変更や通達により、年度における作業時期そのものの変更が行われている場合もあります。
そのような場合には、就業規則上に規定されている、休日日数や労働時間の変更等を伴う場合もありますので、いちど、就業規則等の記載と、実態をご確認いただきたいです。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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