【東京商工リサーチ掲載記事】5月病とその対策<社会保険労務士 成田雄大>
ゴールデンウィーク明けのこの時期、世間では新しい環境への変化に適応できず、心身に不調をきたす状態を5月病と呼んでいます。新入社員に限ったものと思われがちですが、転職・異動・昇進など新入社員以外でも環境の変化に適応できず同様の症状が現れることがあります。また、場合によっては従業員が休職、退職に至ることもあります。
弊社でも休職者について相談を受けることが多いこの時期、会社としてどのような点に注意すべきかについて解説します。
1. 5月病はなぜ起こる?
主に下記のような要因が考えられます。
① 環境の変化
配属変更や昇進、転職による職場環境の変化によるストレス
転勤や初めての一人暮らしなど、生活環境の変化によるストレス
② 人間関係
新しい部署・会社の人との人間関係構築によるストレス
③ ゴールデンウィーク明けの生活リズムの変化
長期休暇と仕事との切り替えによる負担
2. 重症化しないために
特に大切なのは、従業員の行動の変化を汲み取ることです。一般に、下記のような兆候が表れることが多いです。
・遅刻、早退、欠勤が増える
・仕事に集中できていない、ミスが増えた、タスクを忘れる
・発言がこれまでより減った
・身だしなみに気を遣わなくなった
・顔色が悪い
対策として、社内での積極的な声かけ、メンタルヘルス研修の実施により従業員へ症状の自覚を促すこと、相談窓口の設置・周知により症状の解決を促すことが有効です。
3. 重症化し休職を検討する場合
心身不調により欠勤が増えたり、労務の提供が出来なくなった場合、就業規則に基づき休職の発令について検討します。
この場合、休職制度は法律上定められた制度でなく、労働者の福利厚生からの解雇猶予制度であることから、就業規則上での休職の発動条件の記載に注意する必要があります。たとえば、「欠勤が連続〇日を超えた場合」など、休職の発動条件に連続欠勤要件を定めている場合、本人が明らかに不調であっても出勤する場合や一時的に出勤する場合、一度休職から復帰しても症状が再発した場合に休職を発動する場合であっても連続欠勤が求められるため、欠勤のみをもって休職の発動条件とするのは不十分と考えられます。
そこで、休職の発動条件は労務の提供が出来なくなった、かつ復帰の見込みがある場合に、会社が従業員に休職を命令できる文言にすることが望ましいといえます。
4. 行方不明・音信不通となった場合
欠勤中、あるいは休職中に突然行方不明・音信不通となってしまう場合もあります。
法律上会社には従業員の安全配慮義務が課されていることから、まずは本人と連絡を取り安否を確認することが望ましいです。確認できなければ自宅への訪問や、本人以外の緊急連絡先(家族等)に連絡し、本人との連絡を試みます。連絡が取れた場合、今後について従業員と話し合い、雇用を継続するか、退職勧奨を行うか等検討します。
連絡が取れない場合、今後の処遇について検討します。労務の提供がないため、基本的には雇用契約の終了を検討することとなりますが、仮に解雇により雇用を終了させる場合には、その通知が従業員に到達しなければ効力が生じません。これに備えて、就業規則にて自動退職条項(従業員が一定期間行方不明となった場合には自動的に退職扱いとする)を設定しておくことが必要です。
以上、従業員の状況に合わせて注意点を解説しました。重要なのは、いかに症状を重症化させないかということです。その上で、重症化した場合に現状の就業規則で対応できるかどうか確認し、必要に応じて改正を行っておくこととなります。
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