【東京商工リサーチ掲載記事】社員を成長させていくための仕組み<社会保険労務士 山内啓史>
~ 内部統制の視点から ~
少子高齢化や人手不足が深刻化する中、「採った人材に早く活躍してほしい」「せっかく育てたのに辞められてしまうと切ない」と感じるものです。
こうしたお悩みを解消するには、まず社内の仕組みを抜け漏れなく整えることが大切です。社員一人ひとりが安心して学び、成長できるサイクルをくり返し回していくことで、「ここでずっと頑張りたい」と思える職場がつくれます。
今回の記事は内部統制の切り口でご説明をさせていただきます。内部統制は堅苦しいイメージがありますが、要点を押さえれば中小企業でも無理なく取り入れられる仕組みです。
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【内部統制】
内部統制は企業活動の業務有効性・効率性とリスク管理の両立を目指す仕組みです。社員の成長支援にも、以下の5要素をバランスよく整備することが鍵となります。
1. 統制環境
企業文化と経営者の姿勢が内部統制の土台です。トップが経営理念やビジョンを定例会議や社内掲示で繰り返し伝えましょう。経営層と社員によるワークショップを定期開催し、相互理解と信頼を醸成することが、成長意欲を喚起するベースになります。
また、ハラスメントや不当評価を防ぐ行動規範・就業規則・職層ごとの役割を明文化し、公平性を担保することが大切です。
2. リスク評価
社員の成長を阻むリスク要因を定量・定性で把握し、優先度を見極めます。業務負荷やOJTの実施率、研修満足度などをKPIとして継続的に観測するとともに、1on1面談、ブレスト会議などで「学びの障害」となっている事象を洗い出ししましょう。洗い出した課題を「発生頻度×影響度」のマトリクスに落とし込み、最も手を付けるべきテーマ(例:OJT不足/評価基準の不明瞭さ)を明確化します。
3. 統制活動
リスク評価で抽出された課題に対し、具体的な制度とプロセスを設計・運用します。研修体系では、座学・eラーニング・OJTを組み合わせ「習得→実践→振り返り」のサイクルを保証。成長ロードマップを職位・職種別に可視化し、資格取得補助や外部セミナー参加支援を用意します。成果を適切に評価するため、評価制度も導入し、優れたロールモデルは社内表彰で顕彰し、「成長が報われる」文化を根付かせます。
4. 情報と伝達
制度が形骸化しないよう、情報共有と教育の機会を徹底します。経営方針や育成プログラムのスケジュールは月次ミーティングや社内SNSで発信することが重要です。研修や評価制度の内容はeラーニングやハンドブックで学べるようにし、理解度チェックテストも実施します。また、1on1面談や匿名提案箱で社員の声を吸い上げ、全社に共有することで「意見が反映される」信頼感を高めます。
5. モニタリング
施策の効果を定量・定性で検証し、PDCAサイクルを継続します。研修受講率、OJT実施件数、目標達成率などのKPIを月次レビューし、未実施・未達の部署には速やかに是正を指示しましょう。半期ごとの内部監査では制度運用状況をチェックリストで点検し、業務手順書や評価基準のアップデートを行います。出口面談や退職理由分析も活用し、次のリスク評価にフィードバックします。
継続的な環境の整備
内部統制の5要素を連携させた仕組みは、中小企業においても十分に導入・運用が可能です。まずは社内のリスクをブレスト会議や打ち合わせなどで、丹念に掘り起こし、洗い出し・分析・評価を経て課題を明確化し、対策の優先順位をつけることから取り組んでみてはいかがでしょうか。
内部統制の継続的な実践が、社員の着実な成長を促し、ひいては企業の持続的な発展を支える確かな基盤となります。
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