【東京商工リサーチ掲載記事】初めての外国人採用で押さえるべきポイント<社会保険労務士 小野田春奈>
少子高齢化と人口減少の進行により、国内の多くの企業が深刻な人手不足に直面しています。こうした状況下で、外国人材の活用は有力な解決策として注目されています。しかし、日本人の採用とは異なり、外国人を雇用する際には法制度、文化、言語など多方面での準備と配慮が不可欠です。ここでは、初めて外国人を採用する企業が知っておくべき「採用前の確認事項」「活用できる支援機関」「定着のための取り組み」を整理します。
採用前の確認事項
まず重要なのは 在留資格の把握 です。外国人には必ず在留資格があり、資格によって就労可能な職種や条件、在留期間が異なります。技能実習は技能移転が目的で最長5年、特定技能1号は介護・外食・建設などで最長5年、技術・人文知識・国際業務は大卒以上のホワイトカラー職が代表例です。制度上の制限を理解し、採用後のキャリア計画を立てることが不可欠です。
次に、採用目的と職務内容を明確化 しましょう。国や宗教、文化によって働き方や価値観は様々です。どの国の人材がどの職種に適しているかを事前に検討し、ミスマッチを防ぐことが大切です。
また、日本語力の確認 も必須です。日常会話程度で良いのか、専門的なコミュニケーションが必要なのかにより、必要なレベルが変わります。面接での会話や日本語能力試験(JLPT)の結果を活用し、実際の業務に支障がないか確認してください。
さらに、社内の受け入れ体制 も整えておく必要があります。外国人が安心して働けるよう、生活面や文化面でのサポート体制を構築することが企業側の責任です。
採用時に活用できる支援機関
外国人採用は、外部機関を上手に活用することでスムーズに進められます。
登録支援機関(特定技能)
特定技能1号で雇用する場合、生活オリエンテーションや住居確保、日本語学習支援が法律で義務付けられています。自社で難しい場合は登録支援機関に委託できます。
ハローワーク・外国人雇用サービスセンター
外国人向けの職業紹介や各種相談が可能です。最新の支援制度情報も入手できます。
外国人材紹介会社・送り出し機関
海外在住者の紹介は、送り出し国(ベトナム、フィリピン、インドネシア等)と提携した信頼できる会社を選びましょう。
行政書士・社会保険労務士
在留資格変更の手続きや雇用契約、労務管理の専門家として力強いパートナーになります。手続きには時間がかかるため、早めの相談が肝心です。
採用後の定着支援
採用はスタートに過ぎません。大切なのは「定着支援」です。
まず、入社初期の生活支援 が重要です。住居探しや市役所での手続き同行、公共交通機関や病院の案内など、生活基盤の不安を取り除きましょう。
次に、継続的な日本語教育とスキルアップ の機会を提供し、業務理解と職場でのコミュニケーションを円滑にします。
さらに、メンター制度や相談窓口 を設置し、職場内で孤立しない環境をつくります。定期面談で不安を聞き取ることも有効です。
最後に、キャリアパスの明確化 も重要です。昇給・昇格の基準を明示し、努力が報われる仕組みをつくることで、外国人材のモチベーションを高められます。特定技能1号から2号、または永住や高度人材ビザへの移行支援など、中長期のビジョンを共有しましょう。
まとめ
外国人採用は単なる人手不足の解消策ではなく、職場に多様性と国際的な視点をもたらす大きなチャンスです。採用前の制度理解、適切な外部機関の活用、採用後の手厚いフォローがあってこそ、企業と外国人材の双方にとって実りある取り組みとなります。丁寧な準備と長期的な視野に立った受け入れ姿勢で、外国人材と共に成長する職場づくりを進めていきましょう。
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