パート・アルバイトの厚生年金拡大、10年先送りへ――中小企業の負担をどう考える?

パートやアルバイトなどの短時間労働者(※)が厚生年金に加入できる企業の条件が、当初の予定より10年遅れて撤廃されることになりそうです。厚生労働省は、企業規模要件の撤廃時期を「2029年10月」から「2035年10月」に変更する案を自民党に提示しました。背景には、中小零細企業の保険料負担への懸念があります。
※短時間労働者とは
①週の所定労働時間数が20時間以上であること
②賃金月額が88,000円以上であること
③雇用期間2ヶ月以上の見込みがあること
④学生でないこと

そもそも「企業規模要件」って?

現在、短時間労働者が厚生年金に加入するためには、勤務先の企業が「従業員(※)51人以上」である必要があります。この条件を段階的に引き下げ、最終的に規模に関係なくすべての企業に適用するというのが厚労省の方針でした。
※従業員とは厚生年金保険の被保険者数のこと

具体的には、
•2024年10月に「従業員101人以上→51人以上」に拡大(すでに実施済み)
•2027年10月に「36人以上」
•2029年10月に「21人以上」
•2032年10月に「11人以上」
•2035年10月に撤廃(すべての企業が対象)
という流れで進める予定です。

なぜ10年も先送り?

もともと2029年には完全撤廃する予定だったのに、なぜ10年も延期されるのでしょうか?
最大の理由は「中小企業の負担」です。厚生年金の保険料は労使折半なので、企業側も負担が増えます。特に従業員が少ない企業では、これが経営の大きな負担になりかねません。そのため、自民党などから「もう少し段階的に進めるべきだ」という意見が相次ぎ、35年まで小刻みに引き下げる方針に変更されたのです。

どう考えるべきか?

パート・アルバイトで働く人にとって、厚生年金の適用拡大は老後の年金が増えるメリットがあります。しかし、企業側の負担も無視できません。
特に日本では、中小企業が全体の99%を占めており、多くの企業がギリギリの経営をしているのが現実です。負担が急増すれば、雇い止めや労働時間の調整といった形で労働者に影響が及ぶ可能性もあります。そのため、今回のような段階的な引き下げは、企業にとっては「時間的な猶予」となり、現実的な落としどころかもしれません。

とはいえ、10年という期間が長すぎるという意見もあります。労働環境が大きく変わる中で、年金制度が時代に追いつかなくなる懸念もあるため、今後の議論の行方が注目されます。

みなさんは、この延期をどう考えますか?

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