厚生労働省は、令和8年2月4日に開催された労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会において、中小企業退職金共済制度の付加退職金支給ルールの見直しを審議しました。中小企業退職金共済では基本退職金の予定運用利回りが年1%と設定されており、近年の物価上昇や金利環境の変化を背景に、制度の運用環境や加入者への還元のあり方が議論されています。

現行制度では令和4年度に決定されたルールに基づき、付加退職金の支給額上限は前々年度決算における利益剰余金の1%に制限されています。制度上の剰余金の目標額は5,400億円と設定されています。

期間限定で利益余剰金を付加退職金の支給額に還元

今回の見直し提案では、利益剰余金が5,400億円を超えている場合に限り、この1%上限ルールを撤廃します。厚生労働省資料によれば、令和6年度末の利益剰余金は約5,410億円となり、制度が設定している目標額を上回っています。上限撤廃後は、運用収入見込み額の2分の1を付加退職金に充てるという従前のルールを基本として運用することとし、この取扱いは次期財政検証が予定されている令和9年度までの期間に適用される見込みです。

見直しの背景には、制度の財政状況の改善と金融環境の変化があります。令和4年度に現行ルールが導入された当時は低金利環境が続いていましたが、その後、金利環境に変化が見られています。また、資産運用ポートフォリオの見直しなどにより、制度財政の安全性を確保しつつ加入者への還元をどのように行うかが検討されています。今回の見直しは、予定運用利回りそのものを変更するものではなく、制度に生じた剰余金の範囲内で付加退職金による還元のあり方を調整するものと位置づけられています。

審議では複数の委員から見直しへの支持が示されました。清水委員は目標額達成を評価し、上限撤廃による加入者への還元拡大を支持するとともに、インフレ率との関係も踏まえた期待収益率の検討の必要性について言及しました。また、委員からは制度の魅力向上の観点から見直しを評価する一方、今後利益剰余金が目標額を下回った場合の取扱いについても検討すべきとの意見が示されています。

現行制度の利回り1%も見直しへ

なお、現行の予定運用利回りは平成14年から1%で据え置かれていますが、次期財政検証である令和9年度において、予定運用利回りの見直しの要否についても検討される予定です。

次回部会は令和8年3月17日に開催され、付加退職金支給ルール見直しに関する意見書案の再検討や、具体的な付加退職金支給額の決定、関連告示等の改正が審議される予定です。


出典:厚生労働省「第91回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70930.html)