2026.03.09|
東京商工リサーチ掲載記事
わが社は動物園になってしまう?<コンサルタント 松岡藍>
みなさん、こんにちは。
社会保険労務士法人エフピオの松岡藍です。
これは顧問先様と社内の組織再編についてお打ち合わせをしていたときのことです。「わが社では6時間勤務、6時間半勤務、7時間勤務…といった正社員がいるのですが、まとめて『短時間正社員』という呼び名だと混乱してしまう、何かよい呼び名はないでしょうか?」といったご質問がありました。
今回は、この従業員の呼び名について考えていきます。
正社員とは
従業員の呼び名で、正社員が最初に頭に浮かびますが、そもそも正社員とはどのような従業員をいうのでしょうか。定義は…と説明したいところなのですが実は労働基準法や労働契約法上に正社員という文言はでてこないのです。一般的には、雇用契約期間に定めがなくフルタイムの従業員を正社員と呼ぶことが多いですが、必ずしも「正社員」という呼び名にしなければならない決まりはなく、「正規職員」や「フルタイム社員」などといった呼び名にしている会社もあります。
通常の労働者
ただし、例えば、いわゆる同一労働同一賃金の関係で短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下、「パートタイム・有期雇用労働法」という。)において下記のように「通常の労働者」との比較をする場面がでてきます。
ここでいう「通常の労働者」はいわゆる正社員を指していますので、呼び名は何でも構いませんが、わが社のいわゆる正社員は、どんな役割と責任をもっているのか、所定労働時間は何時間なのかといったことを定めておくことが重要となってきます。
短時間正社員
では、短時間正社員はどうでしょうか。同じくパートタイム・有期雇用労働法第2条において、「一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者…の一週間の所定労働時間に比し短い労働者」を「短時間労働者」とよぶ旨が定められています。あくまでいわゆる正社員より労働時間が短い従業員についての記載にとどまっています。
ここで今回の質問に戻りますと、会社で短時間正社員を設ける際にどのような呼び名をしても特段問題にはならなさそうであることがわかりました。
そこで、会社としては6時間勤務や6時間半勤務の従業員と呼ぶのではなく、例えば動物の名前でグループ化してみたい、と考えたのです。正社員も短時間正社員も労働時間が短いだけでおこなってもらう業務内容や責任の範囲にほとんど差がないのに短時間と呼ぶことで差があるように感じて欲しくないという意図がそこにはありました。例えば、いわゆる正社員はウサギ、7時間勤務はキリンのようなイメージです。雇用契約書にも一見してわかりやすいように該当する動物のマークをいれるといった遊び心を加えることも想定していて、従業員の方に受け入れてもらいやすい工夫を心がけたいという気持ちで取り組もうとされています。
よく聞く話として、そもそも「嘱託」という呼び方だと本人が期待されていないと感じてしまうのではないか、と懸念される社長やご担当者がいらっしゃいます。定年後再雇用でまだまだ会社としては戦力として働いて欲しいし、ベテランとして力を借りたいというときに「嘱託」という呼び名がなぜか独り歩きしてしまい、従業員の方のやる気を削いでしまう…という懸念があれば、動物園にはしなくても呼び方の工夫をしてみるのもよいかもしれません。
さいごに
今回の顧問先様は、就業規則上では正社員などの定義はしっかりと定めています。規程などきっちりと定めるところは定めて、社内での呼び方など運用面で工夫できるところに目を向けて進めようとされています。人手不足のこの時代、効率化を進める工夫も必要ですが、「ひと」に目を向けて気持ち良く活躍してもらう工夫が呼び方ひとつでできるなら取り入れてみるのも面白いかもしれませんね。