【東京商工リサーチ掲載記事】スキマバイトは合法?違法?-社労士が解説するグレーゾーン-<社会保険労務士 石川宗一郎>
1. スキマバイト(日々職業紹介)とは――その仕組みと流行の背景
近年、スマートフォンのアプリを活用した「スキマバイト(隙間時間に働くアルバイト)」が注目を集めています。これは、単発・短時間での仕事を希望する労働者と、突発的に人手が必要な事業主とをマッチングするサービスで、「日々職業紹介」の仕組みを活用しています。
一般的な仕組みは以下の通りです。まず、スキマバイト運営会社が「有料職業紹介事業者」として厚生労働省の許可を取得し、求職者と求人企業の仲介を行います。紹介された求職者(労働者)は、求人企業と直接雇用契約(日雇い)を締結し、仕事を行います。この点で、スキマバイトは「紹介型」であり、雇用主はあくまで求人企業である点が特徴です。

注目すべきは、多くのスキマバイトサービスが給与の「即日払い」や「給与支払い代行」機能を提供している点です。これは、求人企業に代わってスキマバイト運営会社が労働者に給与を先払いし、後日、求人企業から立替金として回収する仕組みです。この業務は「労働者に代わって賃金を徴収する」ことになるため、労働基準法第24条(賃金の直接払いの原則)への適合性が問題となりますが、法的には「立替払い」や「ファクタリング」として位置づけられ、近年は一定のガイドラインに基づき適法に運営されています。
スキマバイトが流行した背景には、以下のような理由があります。
・労働者側:ライフスタイルの多様化、柔軟な働き方への志向、即時報酬のニーズ。
・企業側:人手不足対策、繁忙期や急な欠員への対応、採用コストの抑制。
このように、利便性と即時性を兼ね備えた新しい雇用形態として浸透しています。
2. 労働者派遣事業・労働者供給事業との違いと適法性
ここで重要な法的論点として、「スキマバイトは労働者派遣や労働者供給に該当しないか?」という疑問が挙げられます。
まず、労働者派遣とは「派遣元(派遣会社)」が労働者と雇用契約を締結し、その労働者を「派遣先企業」の指揮命令下で働かせる仕組みです。

一方、労働者供給事業とは、労働者を雇用せずに第三者の指揮命令下に労働させる仕組みで、原則として禁止されています(職業安定法第44条)。

スキマバイトは、形式上は「職業紹介」であり、雇用契約は求人企業と労働者が直接締結します。つまり、スキマバイト運営会社は「有料職業紹介事業者」であり、労働者を自ら雇用したり供給したりするわけではありません。したがって、適切に運営されていれば、労働者派遣や供給事業には該当しません。
ただし、実態として「紹介された労働者をさらに他社に派遣する」「労働者の指揮命令を運営会社が担う」などの運用があれば、違法な労働者供給や偽装請負に該当するおそれがあります。法的リスクを回避するためには、業務フローや契約書の適正な管理が不可欠です。
3. 日雇い派遣の原則禁止とスキマバイトの留意点
最後に、スキマバイトに関するもう一つの重要論点として「日雇い派遣の原則禁止」との関係が挙げられます。平成24年改正派遣法により、30日以内の短期派遣(日雇い派遣)は原則禁止されました(一部例外あり)。
スキマバイトは「職業紹介」であるため、派遣法の適用を受けず日雇い派遣には該当しません。ただし、形式だけ「職業紹介」であっても、実態としてスキマバイト運営会社が労働者を雇用し他社に送り込む場合、これは「違法派遣」や「労働者供給」に該当し、法令違反となります。
また、紹介された労働者を求人企業が他社に再派遣(転籍・横流し)する行為も、「日雇い派遣の原則禁止」や「二重派遣の禁止」に抵触する可能性があります。

スキマバイトは雇用契約になりますので、当然に求人企業は労働基準法の遵守や安全配慮義務を負います。まだまだ「スキマバイト」だからと安易に考える経営者も多いです。本人に責任がなく一方的に求人企業がキャンセルを行えば休業手当の支給義務を負います。短期間とはいえ「直接雇っている」という自覚は必要になります。
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