】「話せばわかる!」は、古くて新しい人事の処方箋?<社会保険労務士 津田千尋>

「話せばわかる」、このフレーズは、古い言葉だなぁと思いつつも、この数年は、成功している会社はどこかで、「話せばわかる」を実践している部分があるな、と感じたので、いくつかエピソードをご紹介します。

1.採用の面での「話せばわかる」

 専門学校卒の新卒採用が多い会社さんのケース。数年前に、新卒採用者が相次いで退職するという事態が発生し、会社の方針として見直した点が大きく2点。
・入社後の教育体制の見直し
>実際の配属先を早期に決定し・伝え、実際の配属先での実務教育の時間を多くとる
・内定者に対して、内定者の親御さんと会社の代表との面談を設ける

 どちらも、ひととリアルで会う時間と労力をかけて、採用と教育の両軸を大事にしている会社の姿勢をきちんと表明する、という実践型です。これにより、現在は、離職者が劇的に減って、定着するので教育にも力が入る、という好循環です。

2.採用時と入社後のミスマッチでの「話せばわかる」

 入社後、3か月(ないし6か月)のあいだの試用期間、しばしば会社が悩むことの一つに、「能力の」足らず問題、があります。「能力の」足らず問題は、結構やっかいだと感じる問題の一つで、
・求める能力というものがそもそも定義されていない
・求める能力(の期待値)をそもそも採用時に、求職者に伝えていない
・求める能力の発揮されたかされていないかを数値化できない
・求める能力が発揮されていない状態、を認識できない
というやっかいな現象があります。
顕著に出てくるのが、中途社員採用の場合です。会社側からすると、「期待していたのに、、、」という残念な思いがありつつ、「裏切られた」と感じることが多いのか、この能力の足らず問題をなんとかして解決したい、と強く思う会社と(従業員が)多いです。トラブルの元にもなります。

 採用時には不明瞭であっても、いざ「能力の」の足らず問題が発生すると、個別具体の問題となるので、わりと明確化できることが多いです。
 このタイミングで、「能力の」足らずリスト(求める能力リスト)を作成し、3か月(ないし6か月)の間で解決してもらうための、途中途中の面談の機会を設定し、丁寧に丁寧に進捗報告と進捗確認を実施していく、というのが、採用時と入社後のミスマッチに対する処方箋のひとつの、「話せばわかる」です。面談の際のテクニックもありますが、これは別の機会に。

3.定年再雇用時の「話せばわかる」

 定年再雇用時(嘱託)の際に、そのままの仕事の内容で、と嘱託契約の際の期待値をお話せずに、そのまま、なんとなく、再雇用していませんか?または、他社で定年を迎えた方を、技術力や現場経験を期待して採用した際に、前職で行っていた内容を、そのまま自社で貢献してもらえばありがたい、と期待値を具体的にお話しないで、雇用したりしていませんか?
・労働条件通知書に職務の内容を具体で記載しつつ、採用前後の面談で、具体的な期待値を語る
・前職と現職でのやり方(動き方、差配の仕方、教育の仕方)の違いや考え方の違いを埋める
・技術を継承していってほしい、という期待値を話す時間を作っていく
などの対応で、会社側の「期待を裏切られた!」という残念な事態の発生を少しでも減らしていくことができると、他社の成功事例を最近強く感じています。

 本当は、もっともっとお伝えしたいところですが、紙面の関係で、今回はここまでです。
入社(から、教育、研修、ハラスメント、労務トラブル、退職時に至るまで、さまざまな局面で、「話せばわかる」が成立する余地があります。
そんなときに、一歩立ち止まって、身近な社労士に、ご相談されることをお勧めします。

この記事を書いている人 
-Writer-

津田千尋

特定社会保険労務士

  • youtube

【略歴】千葉県千葉市出身。東京農工大学工学部生命工学科卒業。
卒業後は、理化学機器業界のとある輸入商社に入社し、国内外の商品の仕入・販売・営業・サポートまで幅広く経験。平成27年2月に浅山社会保険労務士事務所(現エフピオ)へ入社。

労務に関する相談対応、就業規則の策定、各種手続き業務、研修講師などを担当。

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