】これからの世代とのすれ違いを防ぐには──採用支援の現場で見えた“問いかけ”の力<コンサルタント 安倍学>

近年、企業の採用・定着支援に携わる中で、「人材確保」は単なる採用活動ではなく、事業の継続性を左右する経営課題になったと強く感じています。どれだけ技術や顧客基盤があっても、それを受け継ぐ人材がいなければ企業は存続できません。だからこそ、次世代人材との向き合い方は経営の根幹です。世代差というより、コミュニケーションの設計思想そのものが変わりつつある──その実感をお伝えしたいと思います。

1.採用の現場で見える“考える人材”

面接の場では、若手ほど丁寧で誠実な受け答えをしようと努める一方、即答を求められると黙り込むことがあります。採用担当者には「反応が薄い」と見える沈黙も、彼らにとっては“誤解なく伝えるために言葉を選ぶ時間”です。「ゆっくり考えていいですよ」とひと言添えると表情がほぐれ、自分の言葉で語り始める。その瞬間に、安心が主体性を引き出す力を改めて感じます。採用は能力を測る場であると同時に、企業が“考える文化”を持っているかを示す場でもあるのです。

2.すれ違いを生む“沈黙の解釈”

立場会話スタイル沈黙のとらえ方コミュニケーション傾向
次世代人材ラリー型相手の反応がない=不安・拒絶即時のリアクションを信頼の証と捉える
上司・管理者層キャッチボール型相手の反応がない=考えている証間を取り、熟考を重んじて返答する

若手は、対話のテンポやリアクションの速さを信頼の証と捉える傾向があります。沈黙が続くと「興味を持たれていないのでは」と不安を抱きがちです。一方、上司層は沈黙を「考えている証」と捉えるため、同じ状況でも真逆の意味に見えてしまう。すれ違いの多くは、価値観の違いではなく“沈黙の見え方の違い”から生まれているのです。

3.沈黙を“共有の時間”に変える

すれ違いを防ぐには、沈黙をなくすのではなく、「考える時間」として扱い、その意図を言葉で伝えることが重要です。「時間はありますから、ゆっくり考えて大丈夫ですよ」「答えは後日でも構いません」と添えるだけで、沈黙は不安の時間から“思考を整理できる余白”に変わります。ある企業では、1on1の冒頭に「最初の数分は沈黙OK」というルールを設けました。社員は落ち着いて意見をまとめられるようになり、上司も“待つこと”の価値を理解するようになりました。沈黙を肯定する姿勢こそ、信頼を育てる第一歩です。

4.採用・育成・制度を“問い”でつなぐ

次世代を活かす企業に共通するのは、採用・育成・評価の軸が一貫している点です。評価項目に「どんな問いを持ち、どう乗り越えたか」「協働にどんな工夫をしたか」といった行動の質を取り入れ、1on1でも同じ問いを使うことで、評価が“査定”から“支援”へと変化します。社員自身が成長を語り、自分の取り組みを言葉にしていくこのプロセスが、組織の自走力を高めています。そしてこの姿勢は採用にも好影響を与え、「この会社は私の考えを尊重してくれる」という安心感が、定着力と育成力の底上げにつながります。

5.採用が示す事業の持続性

採用は人員を補う行為ではなく、企業が未来をどう描くかを映す鏡です。新しい人材を迎えるたびに価値観が刺激を受け、組織文化は更新される。その変化を恐れず、学びの循環として取り込める企業は強いと感じます。ある経営者は「採用は未来を共につくる仲間を迎える営み」と語りました。まさに、事業の持続性を支えるのは制度や仕組みだけでなく、人を信じ、問い続ける姿勢なのです。

おわりに

次世代と向き合うことは、自社の文化と未来を見直すことでもあります。「教える」から「共に考える」への小さな転換が、組織のしなやかさを生み、長期的な成長を支えます。採用の成功はそのまま事業の継続につながる。だからこそ、人と組織が共に育つ関係性を整えることが、私たち支援者の変わらぬ使命だと感じています。

この記事を書いている人 
-Writer-

安倍学

コンサルタント

【略歴】自動車、映像関連、EC・テレビ通販、マーケティング、営業企画、コンサルタントなど、幅広い業界での実務経験を持つ。
現場から経営層まで関わりながら、複数部門を跨ぐマネジメントや組織運営に携わってきた。
現在は、これまでの経験を活かし人事労務コンサルタントとして活動。
多くの企業の人事制度構築や組織づくりに携わり、実行性と納得感のある人事の仕組みづくりを支援している。
趣味はゴルフ。ゴルフを通じて、エグゼクティブに求められる思考様式や行動特性についても日々学びを深めている。

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