厚生労働省より、カスタマーハラスメント対策 企業マニュアルが公表されました。

 労働施策総合推進法の改正により、事業主に対して職場におけるパワーハラスメント対策が義務づけられました。この改正は、大企業は令和2年6月よりすでに適用され、中小企業においては令和4年4月より適用されます。すでに男女雇用機会均等法により義務づけられているセクシャルハラスメント対策とあわせて、ハラスメント撲滅に向けた取り組みが加速しています。

 そんな中厚生労働省から、顧客からの迷惑行為(カスタマーハラスメント)に対する適切な対応を行うための体制整備、被害者への配慮の取組、事前準備や実際の対応における基本的な枠組みを掲載したマニュアルが公表されましたので、一部概要をご案内します。

(引用元:「カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24067.html

1.カスタマーハラスメントとは

 カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先などからのクレーム全てを指すものではありません。企業、業界特性により、顧客への対応方法、基準が異なるため、カスタマーハラスメントを明確に定義することはできませんが、厚生労働省が企業へのヒアリング調査を行った結果、以下のようなものがカスタマーハラスメントにあたるという考えを示しています。

※さらに詳しく

 今回示されたマニュアルでは、上記のような行為を「カスタマーハラスメント」と位置付けており、これらの行為は場合によっては、犯罪、違法行為(傷害罪、暴行罪、脅迫罪、恐喝罪、未遂罪、強要罪、名誉棄損罪、侮辱罪、信用棄損及び業務妨害、不退去罪、その他軽犯罪法における処罰の対象に該当する可能性があることが示されていますので、企業としては時に毅然とした態度で対処することも必要と考えられます。

2.カスタマーハラスメント対策の必要性

 次に、なぜカスタマーハラスメント対策が会社にとって必要かについても示されていますのでご紹介します。

 労働施策総合推進法に基づく「事業主が職場における優先的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」においては、事業主は、顧客からの著しい迷惑行為によって雇用する労働者の就業環境が害されないよう、被害者への配慮のための取り組みを行うことが望ましく、被害防止のための取組を行うことが有効であると定められています。

 したがって、企業及び事業主として適切な対応をしていないと、被害を受けた従業員から責任を追及される可能性もありますので、注意が必要となります。  事例として、保護者による教諭に対する理不尽な言動があった際に、当該教諭の管理者である校長が損害賠償責任を負ったり、一方、企業としてカスタマーハラスメント対策を十分に講じていたことで、安全配慮責任を免れた場合などが挙げられています。

3.カスタマーハラスメントによる従業員、企業等への影響

 では、実際にカスタマーハラスメントが発生した場合に、会社にとってどのような影響が生じるでしょうか。マニュアルでは以下のような様々なマイナスの影響が示されています。

 特に従業員への影響としては、精神的負担だけでなく、対応にあたる時間的コストも多大となることから注意が必要です。  企業は、カスタマーハラスメント対策を講じることにより、これらのマイナスの影響を生じさせないだけでなく、従業員が適切に対応しやすくなる、従業員の不安がなくなり職場環境が良くなる、会社にとって好ましくない客が来にくくなる等のプラス効果も期待できますので、取り組みの意義は大きいものと考えられます。

4.企業が具体的に取り組むべきカスタマーハラスメント対策

 以上を踏まえて、企業がカスタマーハラスメントを想定した事前の準備、実際に起こった際の対応として、以下の取組事例が示されています。

 以上が概要のご案内となります。  詳細は厚生労働省ホームページ、マニュアルをご確認して、取り組みにお役立ていただければと思います。

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