60時間超の割増率変更(25%→50%)に伴う社会保険の随時改定(月額変更届)の取り扱いについて

1)法改正に伴う割増率変更は随時改定(月額変更届)の対象となるか?

令和5年4月より中小企業においても60時間超の残業の割増率が25%より50%に引き上がっています。この変更について「残業代=非固定的賃金」と勘違いして、随時改定(月額変更届)の対象としない取り扱いをしてしまいそうになりますが、今回の変更(法改正に伴う割増率アップ)は、支給単価(支給割合)の変更となり、随時改定の対象となります。

<標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集>

○随時改定について

問2 超過勤務手当の支給単価(支給割合)が変更された場合は、随時改定の対象となるか。

(答) 超過勤務手当については、個々人や月々の稼働状況によって時間数が不確定であるため、単に時間の増減があった場合は随時改定の対象とはならないが、 支給単価(支給割合)が変更となった場合は随時改定の対象となる。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/jireisyu.pdf

2)随時改定の変更の起算月はいつになるのか?

仮に賃金の締切日が毎月末日、翌月10日支払いの会社があった場合は、令和5年4月分である5月10日支払い給与より、法改正に伴い割増率が変更になります。

この会社において

①令和4月1日~4月30日の間に60時間超の時間外労働があった場合

 5月、6月、7月支払い給与を平均して、8月随時改定(8月月変)に該当するかどうか確認することになります。

②4月は60時間超の時間外労働は実績がなく、令和5月1日~5月31日の間に60時間超の時間外労働があった場合

 法改正は4月で、5月10日支給分より適用になっています(支給実績がなくなても)。したがって、①と同様に、5月、6月、7月支払い給与を平均して、8月随時改定(8月月変)に該当するかどうか確認することになります。

③令和5年7月1日~7月31日の間(8月10日支給)に、初めて60時間超の時間外労働があった場合

 法改正後、継続した3ヶ月間に受けた報酬のいずれにも支給実績がないため、そもそも随時改定(月額変更届)の対象となりません。

<標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集>

○随時改定について

問7-2 非固定的賃金が新設された月に、非固定的賃金が支払われる条件が達 成されなかったために初回の支払が0円となったが、次月以降は実際に 支払いが生じたような場合、起算月の取扱いはどのようになるか。

(答) 新たに非固定的賃金の新設がなされたことによる賃金体系の変更を随時改定の契機とする際は、その非固定的賃金の支払の有無に係わらず、非固定的賃金 が新設された月を起算月とし、以後の継続した3か月間のいずれかの月において、当該非固定的賃金の支給実績が生じていれば、随時改定対象となる。 なお、非固定的賃金の新設以後の継続した3か月間に受けた報酬のいずれにも当該非固定的賃金の支給実績が生じていなければ、報酬の変動要因としてみなすことができないため、随時改定の対象とはならない。また、その場合には 当該非固定的賃金の支給実績が生じた月を起算月とすることにもならない。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/jireisyu.pdf

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浅山雅人

社会保険労務士/代表

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【略歴】昭和38年生まれ、京都市出身。慶應義塾大学法学部卒業。平成7年11月にエフピオの前身である浅山社会保険労務士事務所を設立。

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タグ:
60時間超 , 割増 , 月額変更 , 法改正 , 社会保険 ,
   

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