【東京商工リサーチ掲載記事】週10時間勤務で、雇用保険加入へ ~ダブルワーク時の労災保険、雇用保険、社会保険の取り扱いはどうなるの?~<社会保険労務士 浅山雅人>
1.2028年から雇用保険加入は週10時間以上の労働者に適用
週所定労働時間20時間以上の労働者を適用対象としている現行の雇用保険制度について、「週所定労働時間10時間以上20時間未満」の労働者にも2028年度から適用することになる。これに伴い次の事項が見直しなる予定。
1)基本手当(失業給付)が受給できる要件
<現行>
離職日から1ヶ月ごとに区切っていった期間に賃金の支払の基礎となった日数が11日以上又は賃金の支払の基礎となった労働時間数が80 時間以上ある月が離職日から2年間に被保険者期間が12ヶ月以上
※特定受給資格者又は特定理由離職者の場合は、1年間に6ヶ月以上
<見直し>
離職日から1ヶ月ごとに区切っていった期間に賃金の支払の基礎となった日数が6日以上又は賃金の支払の基礎となった労働時間数が40 時間以上ある月が離職日から2年間に被保険者期間が12ヶ月以上
※特定受給資格者又は特定理由離職者の場合は、1年間に6ヶ月以上
2)収入があった場合の基本手当(失業給付)の取り扱い
<現行>
・失業状態にあることの確認(失業認定)時、労働時間が4時間以上の日については支給対象としない。
・労働時間が4時間を下回る日については、労働によって得た収入額に応じて基本手当を減額
<見直し>
・1日当たりの労働時間が2時間(週10 時間相当)の日については支給対象としない。
・2時間未満の労働により収入を得た場合でも、一般的には少額であることを踏まえ、業務簡素化等の観点から基本手当の減額をされない。
2.ますます増えるダブルワーク時の労災保険、雇用保険、健保保険、厚生年金保険はどうなる?
ダブルワーク時における各保険の取り扱い等で特に注意すべき点は次にとおりとなる。
1)労災保険
①加入:すべての事業所で加入(適用)となり、それぞれの事業主が全額負担で保険料を納付
②保険給付:労災事故が発生した仕事の会社での賃金を元に保険給付の額が決まっていたが、令和2年9月以降の労災事故に関しては複数の仕事をしている場合、その全ての賃金を合算した額を元に給付額を決定
2)雇用保険
①加入:二重加入はできない。加入会社でのみ保険料を負担
・パターン1…一方が週20時間以上でもう一方が週20時間未満で勤務の場合
20時間以上の会社で加入
・パターン2…いずれも週20時間以上の勤務の場合
主たる賃金を受ける会社で加入
・パターン3…いずれも20時間未満であるが、合計して週20時間以上で勤務の場合
各社20時間未満であれば、雇用保険は加入できない。
※2028年からは週20時間から週10時間に読み替え
②保険給付:加入している会社で、受給要件や失業給付の額が決定される。
3)社会保険(健康保険・厚生年金保険)
①加入:社会保険(健康保険・厚生年金)への加入は、ダブルワークであるかどうかに関わらず、加入条件を満たすかどうかによって決定
それぞれで社会保険の加入条件を満たしている場合は、両方の会社で社会保険に加入する(=二重加入する)ことが必要となる。
※加入条件…週の所定労働時間が正社員(フルタイム)の3/4以上かつ
月の所定労働日数が正社員(フルタイム)の3/4以上
なお、パート・アルバイト(短時間労働者)は、以下の条件をすべて満たす場合に社会保険の加入対象
1.1週間の労働時間が20時間以上
2.月額賃金が88,000円以上(残業代・賞与等は含まない)
3.2カ月を超える雇用の見込みがある
4.学生ではない(休学中や夜間学生は含まない)
5.勤務先の従業員が101人以上
(2024年10月からは従業員数51人~100人の企業も対象)
②保険料:健康保険料・厚生年金保険料は賃金(報酬)の合計額をもとに計算され、按分してそれぞれで保険料を負担
なお所持する保険証は1つで、どちらの健康保険証を所持するかは自ら選択することができる。
以上のように、ダブルワーク時における公的保険の加入が異なるため、複雑となっています。困ったら、お気軽にエフピオまでご相談ください。
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