【東京商工リサーチ掲載記事】カスハラ対策って何をすればいいですか?<社会保険労務士 津田千尋>
カスハラ(カスタマーハラスメント)対策、どんな対策を打ってますか?
そもそもカスタマーハラスメントって?を今回取り上げてみます。
近年、カスハラをめぐる動きは加速している
6年前、令和元年6月5日に女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律が公布され、労働施策総合推進法が改正されました。
この6年前のパワハラ防止法が義務化され、職場におけるパワーハラスメント対策が
令和2年6月1日から大企業、令和4年4月1日から中小企業でも義務となったことは、記憶にあるとおりです。
そして、昨年、令和5年9月には、心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正され、
この労災認定基準に、なんと、カスハラが追加されています。
認定基準改正のポイント
業務による心理的負荷評価表※の見直し
具体的出来事「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)を追加
具体的出来事「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」を追加
心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例を拡充(パワーハラスメントの6類型すべての具体例の明記等)
※実際に発生した業務による出来事を、同表に示す「具体的出来事」に当てはめ負荷(ストレス)の強さを評価
以下略
カスハラの相談件数実態(企業側、労働者側)
実際に、令和2年度厚生労働省 職場のハラスメントに関する実態調査においても、パワハラ、セクハラに次ぐ相談件数が、顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスハラ)が該当しています。
労働者側の調査においても、過去3年間に勤務先でカスハラを一度以上経験した者の割合は、15.0パーセント、パワハラの31.3%よりは回答割合が低いモノの、セクハラの10.2%よりも回答割合が高いという結果が出ています。
また、受けた顧客等からの著しい迷惑行為の内容は下記となっており、名誉棄損・侮辱・ひどい暴言などが2番目に挙がっています。
パワハラの対応以上に大変だと感じるのが、カスタマーハラスメントの判断基準です。
顧客への行為の対応方法については、業界の慣習、慣例、通例などもあり、業種・業界・企業ごとに違いがあるのが現状です。一定レベルを超えた場合に悪質であると定義をして対応する会社がある一方で、顧客第一主義の中でお客様が納得いくまで寄り添って対応するのという基準を設けている会社もあります。どちらも、間違いではなく、企業ごとに違いがあるということを前提に、「あらかじめ」カスタマーハラスメントの判断基準を明らかにしたうえで、企業内の考え方、対応方針を統一する。そして、「毅然とした」対応を取れるように、現場と共有する、が大切です。
被害者にならないために、加害者にならないために、企業ごとに対策を(まずは実態調査から)
前述のとおり、業界・企業間において違いが発生するものの、総じて、日本の風土文化として、「顧客の要求を断りにくい」、かつ、消費者保護の姿勢があります。とはいえ、下記のように、カスハラについては、従業員や企業に与える負の影響が大きいため、まずは、自社においてどんなことがカスハラにあたるのだろうか、と考えてみる、従業員に対して問いかけてみる、企業の実態調査から始めませんか?
参考)
カスハラによる影響
従業員への影響
・業務のパフォーマンスの低下
・健康不良(頭痛、睡眠不良、精神疾患、耳鳴り 等)
・現場対応への恐怖、苦痛による従業員の配置転換、休職、退職
企業への影響
・時間の浪費(クレームへの現場での対応、電話対応、謝罪訪問、社内での大砲方法の検討、弁護士への相談 等)
・業務上の支障(顧客対応によって他業務が行えない 等)
・人員確保(従業員離職に伴う従業員の新規採用、教育コスト 等)
・金銭的損失(商品、サービスの値下げ、慰謝料要求への対応、代替品の提供 等)
・店舗、企業に対する他の顧客等のブランドイメージの低下
(出典:カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル)
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