【東京商工リサーチ掲載記事】労災で休業が発生した場合の休業補償のイロハ ~知っておくべき、基礎知識~ <社会保険労務士 小野田春奈>
社会保険労務士法人エフピオの小野田です。
業務災害で労災を申請している方の賃金台帳を確認していると、休業しているのに休業補償が支払われていない賃金台帳をよく見かけます。業務災害の場合、待期期間中は事業主が休業補償を行わなければなりません。
1.業務災害の待期期間中の休業補償
労災には、業務災害と通勤災害があります。
業務災害や通勤災害による病気やけがにより、働く事が出来ず、賃金が支払われない場合は、休み始めて4日目から1日につき平均賃金の80%が労災保険から補償されます。
休業(補償)等給付を受けるためには次の3要件を満たす必要があります。
①業務上の事由または通勤による負傷や疾病により療養していること
②その療養のため労働することができないこと
③賃金を受けていないこと
では休業初日から3日目まで(待期期間といいます)はどうするのでしょうか。
この間は業務災害の場合、事業主が1日につき平均賃金の60%の休業補償を行うこととなります。ただし通勤災害の場合には会社に責任がないため補償義務がありません。
平均賃金とは
<原則>
事故発生日以前3ヶ月間にその労働者に支払われた賃金の総額
その期間の総日数(暦日数)
<最低保証>
事故発生日以前3ヶ月間にその労働者に支払われた賃金の総額 ×60%
その期間の労働日数
時給や日給の場合、上記で計算した額の高い方が適用されます。
2.労災事故発生日は待期期間に含むのか
労災の連絡をいただく際にいつからいつまでが待期期間になるのかというご質問をいただきます。労災事故発生日が待期期間に含むのかは、事故が起こった時間や病院に行った時間によって異なります。
●所定労働時間中に労災が発生し、早退して病院へ行った場合→事故当日からカウント
●所定労働時間に労災が発生したが、所定労働時間後に病院へ行った→翌日からカウント
●残業中に労災が発生し、病院へ行った→翌日からカウント
また待期期間の3日間に会社の公休日が含まれる場合でも休業補償を行うことになりますので、ご注意ください。この取り扱いはパートタイマーやアルバイトであっても同じです。
この待期期間の3日間について被災労働者本人が希望した場合、有給休暇として取り扱うこともできます。その場合には、休業補償がされたものとして取り扱われます。
従業員の不注意で負傷し、会社側に過失がない場合であっても、補償の義務があります。
3.一部労働した場合の休業補償は
午前中(3時間)働いて労災事故が起こり、午後(5時間)は病院に行くために早退した場合の休業補償はどのように計算すればよいのでしょうか。
平均賃金から実際に支払われた金額を控除した額の60%の休業補償を行います。
上記例において、被災労働者の平均賃金が10,000円、
実際に働いた3時間分の賃金が4,000円支払われた場合
(10,000円-4,000円)×60%=3,600円
の休業補償を行うことになります。
このように業務災害がひとたび起きると、発生の時刻、病院にかかった時刻、休業した日に一部労働した場合、月給・日給・時給の別などにより、会社としての対応(休業補償の支払い方)が異なります。
会社としてきちんと対応しているつもりが、知らず知らずに間違った対応となり、その結果つまらない労務トラブルに巻き込まれることにもなりかねません。
不安になったら、ぜひエフピオまでご相談ください。
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