】有休休暇の賃金計算~日によって勤務時間がバラバラのときは?~<社会保険労務士 間庭基也>

従業員が有給休暇を取得した際の賃金計算方法について、日によってシフト時間がバラバラの場合、「有給休暇1日分」をどう計算したら良いでしょう。
最も簡便な方法は『有給休暇取得する日の勤務時間×時給』が支払われる計算方法ですが、働き方の状況等によって、最適な方法が異なることがあります。
今回、あらためて有給休暇の賃金計算方法を確認してまいります。

1.有休休暇取得時の賃金計算3つの方法

有休休暇取得時の賃金計算に関しては、その方法が労働基準法に明示されています。使用者は、有給休暇の期間又は時間について、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、次のいずれかを支払わなければなりません。(法39条9項)
①平均賃金
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③健康保険法に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(労使協定が必要)

さらに、②の「通常の賃金」は1日単位の金額へ換算するため、以下のように定められています。
時給制:その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額
日給制:その金額
週給制:その金額をその週の所定労働日数で除した金額
月給制:その金額をその月の所定労働日数で除した金額
請負制:請負制によって計算された賃金の総額を賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、その期間における一日平均所定労働時間数を乗じた金額

一般に多くのケースでは通常の賃金を、これがそぐわない場合に平均賃金を用いる方法が多い様です。順に解説してまいります。

2.所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

ここでいう所定労働時間とは、雇用契約書等に定められた労働時間のことです。
その日に通常どおり働いた場合の賃金がそのまま払われます、という内容なので、計算が非常に楽で、取得する本人にもわかりやすいことがメリットです。
このため多くのケースにおいてこの方法が採用されています。
特に月給制の場合は、通常出勤したとみなして欠勤控除を行わなければよいだけなので、計算する必要がありません。
時給制の場合は、取得日の所定労働時間分を労働したとみなして計算します。計算は必要ですが、通常賃金から計算するだけで金額を算出することができます。
例えば、木曜日は6時間、金曜日は4時間です、というシフトの場合、木曜日に有休を取得すると6時間分、金曜日に有休取得すると4時間分の賃金を支払えば良いことになります。
ただしこれを逆に捉えれば、時給制の方は、所定労働時間が多い日に有給休暇を取得した方が得と思ってしまい特定のシフト日に有給休暇が集中する等の可能性があります。

3.平均賃金

平均賃金を支給します。以下の計算①②のうち、金額の高い方が平均賃金となります。
①以前3か月間に支払われた賃金の総額÷3か月間の総日数(暦日数)
②以前3か月間に支払われた賃金の総額÷3か月間の労働した日数×60/100

この方法は前月までに実際に働いた結果から計算するため、時間が不規則であったり作業量が変動しがちな従業員の場合にも、公正な基準になり得ます。
ただし、この方法は毎回平均賃金計算を行う必要があるため、賃金計算が煩雑になることがデメリットです。
また、時給制の従業員は毎回、過去3カ月の賃金総額(=平均賃金)が変わります。
たまたま公休などが多い月にあたり、日数に対して給与が少ないときに支払い額が減ることもあり、不公平を感じる可能性もデメリットになります。

4.健康保険法に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額

標準報酬月額を用いる方法は、労使協定が必要など採用することにまず面倒があり、また、前述の方法に比して額が少額となる可能性が高い・パート従業員には健康保険に加入していない方もいらっしゃることで結局単純に簡略化できない等があり、用いるケースは少数です。

以上、有給休暇の給与計算を紹介してまいりました。適した方法にて、かつ正確な計算を簡便に行うための参考にしていただければ幸いです。

この記事を書いている人 
-Writer-

間庭基也

社会保険労務士

【略歴】愛知生まれ東京育ち。
明治大学卒業。
医療福祉サービスの事業会社で経理・人事を経験。
給与計算を行うためのシステム刷新に携わる中で、
世の給与計算業務の効率化をもっと広めよう!と目覚めて令和4年にエフピオへ入社。
夢はAIに給与計算をさせること。
給与計算・社会保険手続きを中心に、
日常的な労務相談に応じたり、クライアントの課題に合わせた提案を行っています。

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有給休暇 , 賃金計算 ,
   

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