プラントメンテナンスと時間外労働

社労士の石川です。千葉県の東京湾沿いには市川・船橋・千葉・市原・木更津・君津まで京葉工業地域が広がります。JFEの鉄鋼を始め火力発電、石油化学などの多くのプラントが存在します。

プラントは定期的に定期修理工事(定修工事やSDMといわれる)を行うことが義務付けられています。

定修工事中、プラントは停止するため、可能な限り短期間で終わらせることが求められます。そのため長時間労働が発生しやすい点が問題視されています。

時間外労働をさせるためには36協定の締結が必須となりますが、プラントのメンテナンス会社の方から次のようなご質問を頂戴しました。

新年度の36協定を作成するに当たり、1点確認をお願いします。

「納期の切迫」について、当社では主に定修工事をその要因として特別条項の適用申請を行っておりますが、最近 この定修工事が納期切迫理由に該当しないと判断される事例が発生していると聞いたのですが。如何でしょうか?

確かに、工事の施工計画をは数カ月前から行っておりますが、工事がスタートし途中から追加や仕様変更が発生するケースもあります。

石川社労士の見解をお願い致します。

お客様のメールより(掲載許可済)

定修工事を特別条項の発動要件にできるか、というご質問ですが、結論先に申し上げますと、私の解釈では可能と考えております。

またそういった指導を受けた事例もまだ遭遇しておりません。

この話の発端ですが、おそらく上限規制開始時に法改正で、特別条項に関するものが労基法に加わったことが原因かと思います。

労働基準法第36条第5項
第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間を定めることができる。(以下略)

労働基準法第36条第5項

通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合と条文に書かれていることから、通常予見できない臨時的な業務でないと特別条項を発動できないと解釈したのではないでしょうか。

現にネット上にもそういった趣旨の記事を見かけます。

ただそう解釈してしまうと、予算、決算業務も年度末の工事繁忙も、そして定修工事もすべて予見できてしまうので対象外になってしまうのか?・・・という問題が生じてしまいます。

行政は次のように解釈しているようです。

<限度時間を超えて労働させる必要がある場合>
問6
法第36条第5項に規定する「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に
第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」とは具体的にどのような状態をいうのか。

答6
通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」とは、全体として1年の半分を超えない一定の限られた時期において一時的・突発的に業務量が増える状況等により限度時間を超えて労働させる必要がある場合をいうものであり、「通常予見することのできない業務量の増加」とは、こうした状況の一つの例として規定されたものである。 その上で、具体的にどのような場合を協定するかについては、労使当事者が事業又は業務の態様等に即して自主的に協議し、可能な限り具体的に定める必要があること。なお、法第33条の非常災害時等の時間外労働に該当する場合はこれに含まれないこと。

基発1228第15号(平成30年12月28日)

このように「通常予見することのできない業務量の大幅な増加」はあくまで臨時的な事情の一例にすぎないとしています。

したがって通常予見できるであろう「予算」や「決算」であっても、一時的なものであれば特別条項の発動要件とすることは問題ないと考えられます。

厚生労働省が発行している「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」においても、

予算、決算業務やボーナス商戦等の毎年定期的に発生し通常予見できる繁忙に該当するようなものも、臨時的な事情の例として書かれています。

定修工事が事前に予見できるからといって、特別条項の発動要件に該当しないという根拠にはならないと考えております。

限度時間を超えて労働させることができるのは、「臨時的な特別の事情がある場合」に限ります。

限度時間(月45時間・年360時間)を超える時間外労働を行わせることができるのは、通常予見することのできない業務量の大幅な増加など、臨時的な特別の事情がある場合に限ります。

注意臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合の事由については、できる限り具体的に定めなければなりません。
「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」など、恒常的な長時間労働を招く恐れがあるものは認められません。

臨時的に必要がある場合の例

  • ・予算、決算業務
  • ・ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
  • ・納期のひっ迫
  • ・大規模なクレームへの対応
  • ・機械トラブルへの対応

■時間外労働の上限規制わかりやすい解説 P12
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf