2023.03.20|
東京商工リサーチ掲載記事
攻撃をしてくる人と距離を置くことはハラスメントですか?<コンサルタント 松岡藍>
みなさん、こんにちは。
社会保険労務士法人エフピオの松岡藍です。
先日ハラスメント研修の講師を務めまして、研修資料を作成していた際に、以前お客様から「攻撃をしてくる人と距離を置くことは『人間関係からの切り離し』としてハラスメントになってしまいますか?」というご質問を頂戴したことを思い出しました。 そこで今回は、どの企業様でも少なからずお悩みがあるであろうパワーハラスメントのお話を考えていきます。
■パワーハラスメントとは
いわゆるパワハラは実はきちんと定義があります。パワーハラスメント防止のための指針には、「職場におけるパワーハラスメント」とは
職場において行われる
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの3つの要素を全て満たすものと定義づけされています。
■代表的なパワハラの6類型
上記定義に加えて、厚生労働省は実際にどのような行為がパワハラといえるのかについて6つの代表的な類型を示しています。
①身体的な攻撃…蹴ったり、殴ったり、体に危害を加えるパワハラ
②精神的な攻撃…脅迫や名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など精神的な攻撃を加えるパワハラ
③人間関係からの切り離し…隔離や仲間外れ、無視など個人を疎外するパワハラ
④過大な要求…業務上明らかに不要なことや遂行不可能な業務を押し付けるパワハラ
⑤過小な要求…業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えないパワハラ
⑥個の侵害…私的なことに過度に立ち入るパワハラ
ここで注意しなければならないのは、上記6類型はあくまで代表的な行為を分類したにすぎず限定列挙ではないということです。この6類型に分類されるようなこういでなくてもパワハラの定義にあたるような行為はパワハラとなることがあります。
■「人間関係からの切り離し」にあたるのか
今回のご質問は、上記類型のうち「人間関係からの切り離し」が問題となりそうなのでもう少し深めていきます。
厚生労働省では、特定の労働者に対して、仕事から外したり、別室への隔離・無視や仲間外しなどの行為は、「人間関係からの切り離し」型のパワハラに該当するとしています。その人にだけ業務連絡を伝えなかったり、挨拶をしてもみんなから無視をされたりといった事例が考えられます。
今回ご質問のあった事例は、ご質問者がハラスメントに近い行為(ご質問者曰く小さい意地悪を数年にわたり実施)を受けてきた(以下ハラスメントに近い行為をおこなった者を「行為者」とよびます)ものの職場の雰囲気を乱すまいと積極的にかかわり関係を構築しようとしてきましたが、もう距離を置くことで自身を守ることにしました。これが逆に質問者が行為者に対して「人間関係からの切り離し」にあたるのでしょうか。
たしかに、質問者の距離を置く行為が他の従業員を巻き込み行為者を仲間外れにすることになれば「人間関係からの切り離し」にあたる可能性があります。しかし、挨拶をしなかったり業務連絡をしなかったりといった行為はせずに、積極的な関りをお休みしただけでは「人間関係からの切り離し」とは考えにくいです。ただし、質問者の影響力が高く、周りの従業員が「質問者が行為者と距離を置くなら、わたしも距離を置かないと仲間外れにされてしまう」といった雰囲気を作り出してしまえば「人間関係からの切り離し」の方向性になってきてしまうので注意する必要があります。
■おわりに
ハラスメントは色々な側面があり一概にはハラスメントにあたるあたらないを決めることはできませんが、悩んだらまず周りに相談することがとても肝要です。中小企業も相談窓口の設置が昨年義務化されました。この窓口を利用してひとりで抱え込まないこと、自身がハラスメントの行為者にならないことを意識していきましょう。