【弁護士解説】~M&Aのトラブルについて-その⑤~<よつば総合法律事務所 弁護士村岡つばさ>
これまで4回に亘り、M&Aのトラブルについてお話させていただきましたが、今回は最終回として、M&A後のトラブルについて見ていきます。
1 M&A後になぜ揉める?
M&Aでは、様々な資料が開示・共有されます。例えば株式譲渡契約において、買主は、開示された資料を基に、「この会社はこれくらいの価値がある」と価格を設定し、株式(会社)を買収することとなります。しかし、実際に購入し、会社の中を見てみると、「あれ、これ聞いていなかったぞ」とか、「聞いていた話と違う」となることも少なくありません。このような場合、買主から売主に対し、損害賠償請求を行うことを検討することとなります。典型的な例としては、M&A後に従業員から未払残業代の請求を受けた場合や、税務申告に問題があり、想定外の課税リスクが発覚した場合等が挙げられます。
【買収後じゃ手遅れ】労務に関する見えない負債はデューデリジェンスで見つける
その他、M&A後、売主が同種事業を営み始めた(いわゆる「競業」の問題)、M&A直後に従業員が大量に離職してしまい、事業存続が危うくなるケースや、重要な取引先から契約を解消されてしまう、といったトラブルも見られます。
2 トラブルを防止するために重要なこと
これまでのコラムを見ていただいた方はお分かりかと思いますが、「しっかりと事前調査(デューデリジェンス)を行うこと」と「しっかりとした契約書を取り交わすこと」が極めて大事です。
【企業買収時のリスクを低減】デューデリジェンス(DD)とは?
デューデリジェンスは、相応の時間をかけて専門家が調査を行う以上、それなりの費用がかかります。しかし、安くない買い物をする以上、しっかりと費用をかけて事前調査を行うことはやはり必要でしょう。そして、デューデリジェンスに相応の費用をかける以上、「どうしてもM&Aを実現させたい…」という気持ちに陥りがちですが、私の経験上、そういうケースこそ購入後に後悔します(揉めるケースが多いです)。
また、「仲介会社が作った契約書だから大丈夫」と考えるのは非常に危険です。仲介会社を悪く言うわけでは決してありませんが、仲介会社は、「契約を成立させてなんぼ」の世界であり、契約成立後のトラブルや賠償につき、責任を取ってくれるわけでもありません。あくまでも「自社の立場」から、契約書に問題がないか、想定されるリスクや懸念点がフォローできる契約書になっているか(特に表明保証)を、弁護士に必ず確認してもらうことをお勧めします。
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