厚生労働省から、​「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」が公表されました(令和4年8月30日公表)。

この是正結果の公表は、平成14年度から毎年度行われているものです。

労働基準監督署が監督指導を行った結果、令和3年度(令和3年4月から令和4年3月まで)に、不払となっていた割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100 万円以上である事案を取りまとめましたので公表します。

令和3年度の労働基準監督署の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント

(1)是正企業数1,069企業(前年度比7企業の増)

 うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、115企業(同3企業の増)

(2)対象労働者数6万4,968人(同427人の減)

(3)支払われた割増賃金合計額65億781万円(同4億7,833万円の減)

(4)支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり609万円、労働者1人当たり10万円

労働基準監督署の調査のブームは「長時間労働」

賃金不払残業が起きてしまう原因は、下記4点と考えています。

①そもそも労働時間管理をしておらず、残業時間を把握していない

②残業時間を認識しているにもかかわらず、残業手当を支払っていない

③固定残業代を支払っており、その時間を超えても残業手当を支払っていない

④給与計算ソフトの割増賃金単価設定ミス

一つずつ解説いたします。

①そもそも労働時間管理をしておらず、残業時間を把握していない

タイムカードや勤怠システム等、労働時間管理をやっていない事業所は、労働基準監督署の調査があった際、100%是正勧告が出ます。

ここで、そもそもタイムカードがないのに未払い残業代なんて払えないのでは?という疑問が出てくるかと思います。実際、労働時間管理をやっていない会社に、退職者から未払い残業代を請求されたことがありました。退職者は、タイムカードではなく、時間管理のアプリで、自身で打刻を行っており、それを証拠に未払い残業代を請求してきました。会社として、労働時間の証拠を出せなかったため、退職者が請求してきた時間をそのまま払う結果になりました。

客観的な方法で労働時間管理をすることは、会社の義務となりますので、タイムカードや勤怠システムを使用して管理をしましょう。

②残業時間を認識しているにもかかわらず、残業手当を支払っていない

こちらも言わずもがなで、認識しているにもかかわらず、払っていないのは明らかに違法です。

また、タイムカードを定時で押させる、もしくは36協定の上限時間を超えないようにタイムカードを打刻する、といったような残業時間を発生させないタイムカードの打刻を意図的に、慣習的にやっていることも問題です。

③固定残業代を支払っており、その時間を超えても残業手当を支払っていない

固定残業代は、実際の残業時間に関わらず、一定時間分の時間外労働に対して毎月定額の残業代を支払う制度です。例えば、30時間分の固定残業時間を設定した場合、30時間を超えた場合、超えた時間数分の割増賃金を支払わなければなりません。

④給与計算ソフトの割増賃金単価設定ミス

時間管理はきちんと行っている、残業時間はすべて支払っている、と会社は思っているけれど、ソフトの設定が間違っていて意図せず未払い残業となっている、があります。

主に設定ミスとなっている点は2つです。

1つ目は、割増賃金の対象となる手当の設定が誤っている点です。割増賃金の算定基礎から除外する手当は、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の計7つです。逆に言えば、この7つ以外の手当は割増賃金の対象としなければなりません。

2つ目は、割増賃金の計算の元となる所定労働時間の設定が誤っている点です。所定労働時間の計算方法は、会社の年間休日と1日の所定労働時間によって計算されます。

この2点について、過去ずっとそのままの設定であった等、会社が知らずに未払いを発生させているケースが見受けられます。

労働時間管理の必要性と正しい計算設定

監督指導を受けて支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり609万円ということですが、1企業にとっては多額の金額かと思います。

今一度、労働時間管理を行えているか、正しく割増賃金が設定されているか、確認をしましょう。

監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度) 厚生労働省

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