2023年4月まであと6か月!中小企業の時間外割増率アップまでに行うこと

2022年10月1日より社会保険適用拡大、育児介護休業の法改正、最低賃金の改正、道路交通法対応、在職定時改定制度の実際のスタート・・・と今年(2022年)の10月1日は、本当に法改正の目白押しですね。

2022年は、人事労務担当者にとって行き着く暇なし(もとい!息つく暇なし!)の年かもしれません。

そんな人事労務担当者の方に、10月1日を乗り切ったら、ぜひ行っていただきたいことを、今回はお知らせします。

2023年4月より、いよいよ中小企業でも、60時間を超えた時間外割増の割増率がアップします。

何がいつから変わるのか?

2023年4月1日勤務分から、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます。

中小企業においても、割増賃金率が50%になります。

2023年3月31日まで(現行)は、中小企業の割増賃金率は25%以上ですので、25%で支給している中小企業が多いと考えらえます。

この割増賃金率が、「25%」ではなく「50%にアップ」しますというのが、2023年4月1日に施行される改正です。

1.時間外60時間を超える対象者の洗い出し

これは、そもそも論なのですが。

時間外割増率がアップするとはいうものの、みなさまの事業所に、 月60時間を超える時間外労働が発生していなければ、何ら慌てることはないわけです。

(そんなことはないよ津田さん!と言われるを知っていて、記載する筆者はなかなかの悪女ですね!)

月60時間を超える対象者がいた場合は、どんな仕事を担っていただいているかを、業務内容の詳細の洗い出しをお願いします。

2.新規採用と、現在の人財での業務分担が可能かどうかの判断

人財が慢性的に足りていないという事業所も、残念ながら多いですし、現実です。

確かに新規採用は継続してお願いしたい解決策のひとつです。 ですが、新規採用だけに頼るのではなく、今回は、既存の人財も含めての確認が必要です。

一部の方にだけ、月60時間超の時間外勤務が偏っている場合は、 何故該当の方に仕事が偏っているのかを洗い出しをお願いします。 (特定のスキルをお持ちなのか、部署に1名しかいない等)

これを6か月以内に洗い出していただき、業務内容を分掌できるよう、仕訳をお願いします。

3.管理職だから大丈夫!?

実は、今回のニュースの肝はここです。

管理職だから「残業代支給に該当しないから、大丈夫」と考えられている場合は要注意です。

管理職は、労働基準法における管理監督者と完全一致ではありません。

平成20年の通達ですが、労働基準法の管理監督者にあたるかの判断基準の一つとして、 下記のようなものがあげられています(一部抜粋)

多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について

管理監督者に該当するか否かについては、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩及び休日に関する規 制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを、職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断することとなるというもののうち、最初の「職務内容、責任と権限」についての判断基準は下記のとおりです。

「職務内容、責任と権限」についての判断要素

店舗に所属する労働者に係る採用、解雇、人事考課及び労働時間の管理は、店舗にお ける労務管理に関する重要な職務であることから、これらの「職務内容、責任と権限」 については、次のように判断されるものであること。

(1) 採用

店舗に所属するアルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む。)に関 する責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

(2) 解雇

店舗に所属するアルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれてお らず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

(3) 人事考課

人事考課(昇給、昇格、賞与等を決定するため労働者の業務遂行能力、業務成績等 を評価することをいう。以下同じ。)の制度がある企業において、その対象となって いる部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関 与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

(4) 労働時間の管理

店舗における勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的 にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

長くなってしまいましたが、今回の2023年4月1日の時間外割増率アップに関して、 「管理職だから、該当しない。」という判断については、 管理監督者としての取扱いが適正か否かを慎重にご判断いただきたいと考えます。

この記事を書いている人 
-Writer-

津田千尋

社会保険労務士

  • youtube

【略歴】千葉県千葉市出身。東京農工大学工学部生命工学科卒業。
卒業後は、理化学機器業界のとある輸入商社に入社し、国内外の商品の仕入・販売・営業・サポートまで幅広く経験。平成27年2月に浅山社会保険労務士事務所(現エフピオ)へ入社。

労務に関する相談対応、就業規則の策定、各種手続き業務、研修講師などを担当。

お問い合わせは、下記よりお願いいたします。

弊社の記事の無断転載を禁じます。なお、記事内容は掲載日施行の法律・情報に基づいております。本ウェブサイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。社会保険労務士法人エフピオ/株式会社エフピオは本ウェブサイトの利用ならびに閲覧によって生じたいかなる損害にも責任を負いかねます。

タグ:
中小企業 , 働き方改革 , 労務管理 , 時間外労働 ,
   

関連記事

2024.04.11
特定技能・育成就労
2024.03.28
令和6年4月より、雇い入れ・作業変更時の安全衛生教育の範囲が拡充されます
2024.03.14
育児介護休業法の改正案(令和7年予定)が国会に提出されました
2024.02.01
令和6年4月から障害者の法定雇用率引上げへ
2024.01.25
社会保険適用拡大 令和6年10月1日施行
2023.10.31
厚生労働省のキャンペーン施策(11月)
2023.10.12
令和5年12月1日よりアルコールチェック義務化へ
2023.08.10
│先取り!令和6年4月1日改正│ 「労働条件の明示」ルールが変わります
2023.05.10
60時間超の割増率変更(25%→50%)に伴う社会保険の随時改定(月額変更届)の取り扱いについて
2023.04.20
2024年4月1日から労働条件明示のルールが変わります