【東京商工リサーチ掲載記事】会社帰りに遭った事故だったら、飲み会に行った場合にあった事故でも労災ですよね?<コンサルタント 松岡藍>
みなさん、こんにちは。
社会保険労務士法人エフピオの松岡藍です。
今回も顧問先様からいただいたご質問で、普段は自家用車で通勤している従業員が会社帰りに事故に遭ってしまったそうです。大事には至らなかったとのことでひとまず安心したのも束の間、場所を聞いてみると会社とも従業員の自宅とも離れている駅前で起こった事故でした。
「こんな場合でも、仕事帰りは仕事帰り…労災になってしまいますよね?」というご質問をいただきました。
家に着くまでが遠足!の気持ちで、従業員が帰宅するまでに遭遇した事故はすべて労災になってしまうのでしょうか?
今回はこちらのお話を考えていきます。
■労災とは?
いわゆる労災保険には、業務災害と通勤災害とがあります。業務災害とは、労働者が業務を原因として被った負傷、疾病、障害または死亡をいい、通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害または死亡をいいます。
労災か否かを考えるのに、まずは「業務を原因」とするのか「通勤により」といえるのか、いずれにもあたらないのかと検討する必要があります。
今回の事例がいずれにあたるかを考えるには材料が足りないのでもう少し詳しくヒアリングしてみることにしました。なぜ、自動車通勤の従業員が全然最寄りでもない駅前で事故に遭ってしまったのでしょうか?
どうやら当該従業員は、大学の同級生との飲み会に参加した帰りに駅に向かって歩いていたところ自転車と接触事故に遭ったとのことでした。
■通勤災害とは?
事故に遭ったのがプライベートな飲み会の帰りだったので、明らかに「業務を原因」としていないこととから、今回は「通勤により」といえるのか否かを検討していくことにします。
「通勤」とは
①就業に関し、次に掲げる移動を、
(1)②住居と③就業の場所との間の往復
(2)就業の場所から他の就業の場所への移動
(3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
④合理的な経路および方法により行うことをいい、⑤業務の性質を有するものを除くものとされていますが、⑥移動の経路を逸脱し、または移動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません。
では、今回の事例が「通勤」といえるのか問題になりそうな要件をピックアップして検討していきましょう。
■④合理的な経路および方法とは?
移動を行う場合に一般に労働者が用いると認められる経路および方法をいいます。
通勤のために通常利用する経路が複数あってもいずれも「合理的な経路」になりますし、通常通勤に用いられる通勤方法であれば、普段利用している通勤方法でなくても「合理的な方法」になります。
当該従業員は普段自動車通勤ですが、事故当日は飲み会ということで電車を利用していました。このこと自体は合理的な方法といえます。
他方、飲み会のために寄り道をして遭遇した事故だったので合理的な経路か否かというよりは次の「移動の経路を逸脱、または移動を中断」したのではないかが問題となりそうです。
■⑥移動の経路を逸脱、または移動を中断とは?
「逸脱」とは、通勤の途中で就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれることをいい、「中断」とは、通勤の経路上で通勤と関係のない行為をおこなうことをいいます。
今回の事例では同級生との飲み会で全くのプライベートなので、「通勤と関係ない」といえるので「逸脱」「中断」しています。
なお、通勤途中にどこにも寄り道してはいけないということはなく、厚生労働省令で定められた例外(日用品の購入や病院で診察を受けるなど)にあたれば「通勤と関係」なくても通常の通勤経路に戻れば「通勤」中と判断されることがありますので注意が必要です。
■おわりに
ということで、今回は通勤災害にはあたらなさそうです。最終的には労働基準監督署が労災になるか否かを判断しますが今回のように経路の逸脱は通勤災害とは認められないと考えられます。コロナウイルス感染症が5類感染症へと移行したことで飲み会が増えてくるかもしれませんので頭の片隅にでも入れておいていただければ。
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