】永年勤続の表彰金は社会保険料の対象となるのか?<社会保険労務士 小林沙奈江>

勤続10年、20年と長期勤続をした方に対して、会社が永年勤続表彰金を支給することがあります。年金事務所の調査にて、この永年勤続表彰金が社会保険の報酬の対象となり、賞与として社会保険料を払わなければならない、という指摘がされたことがありました。

今回のコラムでは、永年勤続表彰金は社会保険の報酬の対象か否かについてみていきます。

そもそも社会保険の報酬とは?

社会保険の報酬は、月額の報酬の範囲と賞与の範囲、それぞれ定められています。

月額の報酬の範囲:基本給のほか、役付手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当等、労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるものを指します。なお、年4回以上の支給される賞与についても標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます。

賞与の範囲:賃金、給料、俸給、手当、賞与、その他いかなる名称であるかを問わず、被保険者が労働の対償として受けるもののうち年3回以下の支給のものをいいます。また、労働の対償とみなされない結婚祝金等は対象外です。

永年勤続表彰金は報酬の対象となるのか?

永年勤続表彰金は、年3回以下の支給のため、賞与として取り扱わなければならない、ということでたびたび年金事務所の調査にて指摘がありました。

ただ、報酬の定義の中で「労働の対償として受けるもの」があります。労働の対償の定義は、次の通りです。①労働者が自己の労働を提供し、その対償とし受けるものであること、②常時又は定期的に受け、労働者の通常の生計に充てられるものと解されます。

この定義から、永年勤続表彰金は、「①労働者が自己の労働を提供し、その対償とし受けるものであること」には該当すると考えますが、「②常時又は定期的に受け、労働者の通常の生計に充てられるもの」は該当しないと考えます。永年勤続表彰金は、常時または定期的には支給されておらず、勤続していたからといって必ず支給されるものではないため、生計に充てられているものともいい難いです。

このように、永年勤続表彰金は、支給されていることにより報酬の対象と指摘を受けることがあったとしても、定義をかみ砕いて確認してみると、報酬ではないという考えが出てきます。

厚生労働省の回答(令和5年6月27日付「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について)

つい先日、厚生労働省がこの質問の回答をQ&Aで明確化されました。

【問】事業主が長期勤続者に対して支給する金銭、金券又は記念品等(以下「永年勤続表彰金」という。)は、「報酬等」に含まれるか。

【答】永年勤続表彰金については、企業により様々な形態で支給されるため、その取扱いについては、名称等で判断するのではなく、その内容に基づき判断を行う必要があるが、少なくとも以下の要件を全て満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として「報酬等」に該当しない。

ただし、当該要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに「報酬等」と判断するのではなく、事業所に対し、当該永年勤続表彰金の性質について十分確認した上で、総合的に判断すること。

≪永年勤続表彰金における判断要件≫

① 表彰の目的

企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。

② 表彰の基準

勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。

③ 支給の形態

社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。

この回答により、永年勤続表彰金は上記の判断要件に該当する場合は報酬ではないと判断されるようになりました。永年勤続表彰金を支給されている会社は、今一度要件に該当するかどうかを確認することをお勧めいたします。

この記事を書いている人 
-Writer-

小林沙奈江

社会保険労務士

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【略歴】栃木県栃木市出身。千葉大学教育学部卒業。平成23 年に浅山社会保険労務士事務所(現エフピオ)へ入社し、平成26 年社会保険労務士資格取得。

評価・賃金制度の作成、セミナー講師等の業務を担当。医療関係のクライアントが多く、給与計算ソフトや勤怠管理ソフトの設定も得意。
明るく、元気に迅速な対応を心がけています。

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