】~ハラスメント調査の注意点-その④~<よつば総合法律事務所 弁護士村岡つばさ>

前回までに、被害申告者、加害者とされる人物、第三者にヒアリングをする際の注意点をお話させていただきました。

今回は、ヒアリングを踏まえた事実認定のポイントについてお話します。

①行為者が行為を認めている場合や、録音等の客観的証拠がある場合

基本的には、争いのない事実や、客観的証拠の内容通りの事実を認定すれば大きな問題はありません(このようなケースばかりだと本当に楽なのですが…)。

ただ、「どの部分が争いのない事実なのか」「この客観的証拠から認定できる事実はどの範囲の事実か」という検証は必要です。Aという事実は認めているものの、それ以外のB、Cという事実は認めていないという場合、後記②、③の観点から、「B、Cという事実が認定できるか」を検討する必要があります(行為者への処分にも関わってくるため)。

②行為者が行為を否定し、客観的証拠もなく、目撃者もいない場合

被害申告者・行為者の供述を慎重に検討する必要がありますが、被害申告者の供述のみで事実認定できるケースは多くありません。最終的には、「証拠不十分」であるとして、事実認定できないケースも非常に多いです。これはやむを得ないかと思います。

ただし、必要な調査を十分に行ったか(本当に証拠はないか)という検証は必須ですし、被害申告者にどのように結果を伝えるか、という点も配慮・検討が必要です。

③第三者の供述の信用性が重要となる場合

行為者が行為を否定し、客観的証拠もないものの、目撃者がいる場合には、この目撃者(第三者)の供述の信用性がとても重要になります。

上記②とも共通しますが、供述の信用性を検討する上では、㋐客観的証拠との整合性、㋑供述内容自体の合理性・具体性、㋒虚偽の供述をする動機の有無(被害申告者・行為者との関係性等)といった事情を総合的に考慮して、慎重に検討する必要があります。

ーーーーーーーー

特に上記②③のケースは、裁判所ごとに判断が大きく分かれますし、判断の中で、非常に細かく供述の信用性を検討しています。一度、裁判例を読んでみると、「ここまで深く検討しなければならないのか…」と思われるはずです。

次回は、事実認定後の「法的評価」についてお話する予定です。

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村岡つばさ

よつば総合法律事務所 企業法務部門責任者・弁護士

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【略歴】早稲田大学法学部・慶應義塾大学法科大学院卒業
千葉では珍しく「企業法務案件」のみを扱う弁護士。
会社側の労働案件が専門分野。
社労士会、税理士会、弁護士会等各種団体で研修・セミナー講師を多数担当。
税理士法人レガシィより
「これだけやっておけば良い!パワハラ防止法対策」
「使用者側目線 労災対応ノウハウ」セミナー発売中

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