】気分転換の方法、みなさんは、いくつお持ちですか?<社会保険労務士 津田千尋>

最近とくに、ハラスメント相談と、メンタルヘルス不調のご相談が多いことから、視点を変えて、メンタルヘルス対策、気分転換の方法について、取り上げてみたいと思います。

さて、いま、ここで、気分転換したい場合、皆さんは、何をしますか?気分転換の方法、どれくらいお持ちですか?

令和4年度の過労死等の労災補償状況より

少し古いですが、6月30日に、令和4年度の過労死等の労災補償状況が厚生労働省より公表されています。少し回り道しますが、データを表示します。

 過労死等に関する請求件数:3,486件(前年度比387件の増加)
 支給決定件数:904件(前年度比103件の増加)
 うち死亡・自殺(未遂を含む)件数:121件(前年度比15件の減少)

となっています。

そのうち、精神障害に関する部分を見てみると、下記のようになっています。

 請求件数は2,683件で前年度比337件の増加。
 うち未遂を含む自殺の件数は前年度比12件増の183 件。
 支給決定件数は710件で前年度比81件の増加。
 うち未遂を含む自殺の件数は前年度比12件減の67件。

厚生労働省発表資料より抜粋
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33879.html

着目すべきは、時間外労働時間別の傾向で、精神障害は長時間労働者が多い、と思いますか?実はそんなことはないのです。1ヶ月平均の時間外労働時間別の傾向としては、支給決定件数において、「20時間未満」が87件で最も多く、次いで、「100時間以上~120時間未満」が45件となっています。

ということは、労災における精神障害においてみると、長時間労働ではなく、そもそも時間に関係なく、メンタルヘルス対策が大事ですね、ということになるわけです。

さて、冒頭の質問に戻りましょう。気分転換したいとき、皆さまは何をしますか?

旅行、外食、温泉、サウナ、ハイキング、釣り、運動、ジムで汗を流す、ジョギング…

それももちろん大事です。

でも、もっと身近で、「今」「この場でできること」をたくさん持っていただきたいです。

ちなみに、私自身は、

・ 立って、歩いて、血行促進
・ 足と頭のマッサージ
・ お手洗い(トイレ)に行く
・ 手を洗う、(洗えなければウェットティッシュで手を拭く)
・ デスクに置いてあるお茶を口に含む
・ コーヒーを淹れる
・ しんどいな、とつぶやく など。

取引先や、同僚が同行していたり、現実的に実行が難しい場合も多いですが、バリエーションを多く持てば、どれかは実行できます。

今日の夜の気分転換、週末の気分転換、休暇が取れた時のリフレッシュ方法、ももちろん大事ですが、何より、今この場で、貯めない。この瞬間に、放出する。という視点で、気分転換の方法を見直してみませんか?

メンタルヘルス対策の4つのケア

メンタルヘルス対策には4つのケアがあると言われます。

  1. 「セルフケア」は、私たちが自分自身で行うことのできるケア。働く人が自らのストレスに気付き、予防対処し、また事業者はそれを支援すること。
  2. 「ラインによるケア」は、管理監督者が行うケア。日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うことなど。
  3. 「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」は、企業の産業医、保健師や人事労務管理スタッフが行うケア。労働者や管理監督者等の支援や、具体的なメンタルヘルス対策の企画立案を行うことなど。
  4. 「事業場外資源によるケア」は、会社以外の専門的な機関や専門家を活用し、 その支援を受けること。

ちなみに、さきほどの、「今この瞬間の気分転換」というのは、「セルフケア」の一環です。メンタルヘルス対策、と聞くと、何から始めよう、とか、難しそうだな、とか感じますが、そんなことありません。きっかけは、まずは、自分自身の気分転換から。軽い気持ちで取り組んでみましょう。

この記事を書いている人 
-Writer-

津田千尋

社会保険労務士

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【略歴】千葉県千葉市出身。東京農工大学工学部生命工学科卒業。
卒業後は、理化学機器業界のとある輸入商社に入社し、国内外の商品の仕入・販売・営業・サポートまで幅広く経験。平成27年2月に浅山社会保険労務士事務所(現エフピオ)へ入社。

労務に関する相談対応、就業規則の策定、各種手続き業務、研修講師などを担当。

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