【弁護士解説】~ハラスメント調査の注意点-その⑤~<よつば総合法律事務所 弁護士村岡つばさ>
今回は、ハラスメント調査の注意点その⑤として、ヒアリング、事実認定の後の「法的評価」の問題をお話しします。
※ここでは「パワーハラスメント」に絞って解説します。
そもそも「パワーハラスメント」とは?
法律上、「パワーハラスメント」とは、「①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③その雇用する労働者の就業環境が害される行為」を指すと定義されています(①~③は筆者が付したものです)。この定義だけ見ても良くわからないので、以下簡単に解説します。
①「優越的な関係を背景とした言動」
「優越的な関係」とは、労働者間の立場の差や、スキル・能力差が典型的なものです。上司⇒部下への行為や、先輩⇒後輩への行為は、通常、「優越的な関係」が背景にあるので、この要件を基本的にはクリアします。部下⇒上司、後輩⇒先輩への行為も、スキルや能力差があるような場合(例:部下の方が経験豊富な場合や、勤続年数が長い場合等)には、この要件を満たします。いわゆる「逆パワハラ」の問題です。
②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動
「指導とパワハラ」の線引きがよく問題になります。私も良く判断に悩みます。
結局は個別に判断をせざるを得ないですが、言動の内容だけでなく、そのような言動が行われた背景(被害者とされる側の落ち度の程度等)、業務との関連性等の様々な事情を考慮して判断されることとなります。「被害者とされる人物の問題行動も大きかったので、ある程度厳しい改善指導を行うこともやむを得ない」と判断している裁判例も多く存在します。
③「労働者の就業環境が害される行為」
よく、「被害者がパワハラと感じたらそれはパワハラだ!」というフレーズを耳にすることがあるかと思いますが、これは間違っています。基本的には、「平均的な労働者であればどのように感じるか」という視点で判断されます。要は、本人がパワハラと感じていても、まあ普通の労働者であればそうは思わないよね…というケースは、パワハラには当たりません。とはいえ基準は曖昧で、裁判所によっても判断が分かれる部分ではあります。
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