専門業務型裁量労働制の適用時に本人同意が必要となります
厚生労働省は12月20日の労働政策審議会の分科会において、研究開発者、デザイナー、弁護士、公認会計士等の対象業務に専門業務型裁量労働制を適用させる際、従業員本人との同意を義務づけることを提示し、2024年から導入される方向となりました。なお、本人同意の取得の他にも、対象業務の拡大や健康福祉確保に関する内容についても改正が予定されています。
専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として、法令等により定められた19業務の中から、対象となる業務を労使協定で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度(厚生労働省「専門業務型裁量労働制の適正な導入のために」より)です。労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることで導入することが出来、個別の従業員の同意は求められていませんでした。
一方、事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象とした企画業務型裁量労働制の導入においては、現状においても個別の従業員の同意が必要となっています。
裁量労働制は長時間労働を助長し過労を強いることに繋がる場合があり、企業の都合で過大な業務を行わせる懸念に対応するため、専門業務型にも本人同意を必要とすることになりました。
裁量労働制の適正な導入については、現行においても厳格なルールの遵守が求められており、不適切な適用があった場合は、勤務実態に基づいた残業時間の再計算を求められることもあります。導入されている企業様はこれを機に運用状況の点検をされてみてはいかがでしょうか。
▮ 参考:専門業務型裁量労働制の対象19業務(2022年12月現在)
(1) 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
(2) 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務
(3) 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務
(4) 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
(5) 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
(6) 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
(7) 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
(8) 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
(9) ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
(10) 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
(11) 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
(12) 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
(13) 公認会計士の業務
(14) 弁護士の業務
(15) 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
(16) 不動産鑑定士の業務
(17) 弁理士の業務
(18) 税理士の業務
(19) 中小企業診断士の業務
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