】退職代行サービスの労働組合化

 最近巷では「退職代行サービス」が流行っているそうです。この人手不足の中、辞めようとする社員を執拗に引き留める企業が存在し、中々辞められないと悩んでいる人が多いという背景があるようです。一昔前は退職時に揉めたら弁護士に依頼するものでしたが、最近の若い社員は「退職代行サービス」を選ぶようです。

この「退職代行サービス」のブームを作り出した企業は、弁護士でも弁護士法人でもありませんでした。『弁護士に頼むのは心理的ハードルが高いが、会社は辞めたい』というニーズを上手く拾ったのでしょう。

非弁行為ではないのか?

「弁護士ではないのに、本人に代わり退職届を会社に提出するサービスは、非弁行為に当たらないのか」と議論を呼びました。「退職代行サービス」を実施する企業は、あくまでも「退職代行サービス」は本人の代理をするわけではなく、退職届を提出するだけの使者(メッセンジャー)であるという解釈を用いていたようです。

しかし使者であるなら退職時に未払い賃金の請求に代表されるような交渉ごとはできません。

 「退職代行サービス」が流行るにつれて安価で弁護士事務所も「退職代行サービス」に参入してきており、混沌としてきています。

ユニオン化した退職代行サービスは、労働組合と言えるのか・・・?

「そんな裏ワザがあったか」と思わずにはいられません。労働組合となると法律で保護されることとなりますし、非弁行為とは言われず堂々と企業との交渉ができます。「退職代行サービス」が労働組合法を”ハック”したのです。

労働組合法では、「労働組合」の定義を次のようにしています。

労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。(労働組合法第2条より抜粋)

要約すると労働組合には次の要素が必要となります。

  1. 労働者が主体となって組織すること
  2. 労働者の自主的な団体であること
  3. 主目的が労働条件の維持改善であること

「退職代行サービス」が主体となって結成した労働組合が「労働者主体」や「自主的な団体」と言えるのか、退職代行だけを目的とする労働組合が「労働条件の維持改善」に資するものなのか・・・個人的には様々な疑問を感じます。

以前本稿へ揚げた残業代請求ビジネスと同じように、「退職代行サービス」が企業への請求を主目的とするビジネスへ変化しつつあるようです。こういった雇用環境の変化は企業経営者や人事担当者は敏感になっておく必要があります。

関連ブログ

~退職代行の諸問題~<よつば総合法律事務所 弁護士村岡つばさ>

ここ1~2年ほど、「従業員が退職代行を使っていきなり会社に来なくなった!」など、退職代行に関するご相談をいただくことが非常に増えました。 今回は、退職代行に関する問題についてお話します。 …

続きを読む

お問い合わせは、下記よりお願いいたします。

弊社の記事の無断転載を禁じます。なお、記事内容は掲載日施行の法律・情報に基づいております。本ウェブサイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。社会保険労務士法人エフピオ/株式会社エフピオは本ウェブサイトの利用ならびに閲覧によって生じたいかなる損害にも責任を負いかねます。

タグ:
退職代行サービス ,
   

関連記事

2024.04.01
東京商工リサーチ掲載記事
『社員研修の目的と企画・導入』について<社会保険労務士 廣瀬潤>
2024.03.04
東京商工リサーチ掲載記事
週10時間勤務で、雇用保険加入へ ~ダブルワーク時の労災保険、雇用保険、社会保険の取り扱いはどうなるの?~<社会保険労務士 浅山雅人>
2024.02.28
東京商工リサーチ掲載記事
マイナンバーカードの健康保険証 利用されてますか?<社会保険労務士 伊藤美由起>
2024.02.05
東京商工リサーチ掲載記事
労災で休業が発生した場合の休業補償のイロハ ~知っておくべき、基礎知識~ <社会保険労務士 小野田春奈>
2024.01.22
東京商工リサーチ掲載記事
雇用保険=失業保険にあらず。人材育成に活用を!<社会保険労務士 松井 碧城>
2023.12.25
東京商工リサーチ掲載記事
建設業だったら協定さえ結んでおけば、月45時間超えて残業させても大丈夫なんですよね?<コンサルタント 松岡藍>
2023.11.27
東京商工リサーチ掲載記事
「会社分割」における労働契約の承継<社会保険労務士 小山健二>
2023.11.20
東京商工リサーチ掲載記事
社長の金庫に入れられた就業規則は有効か?<社会保険労務士 石川 宗一郎>
2023.10.30
東京商工リサーチ掲載記事
年収の壁・支援強化パッケージの落とし穴~この2年間、年収130万円超えても被扶養者になれる?は誤解~<社会保険労務士 浅山雅人>
2023.10.16
東京商工リサーチ掲載記事
年収の壁(106万円の壁、130万円の壁)を改めて考えてみました<社会保険労務士 廣瀬潤>