【東京商工リサーチ掲載記事】新型コロナウイルスによる休業で給与が下がった場合、すぐに社会保険料を改定できます
新型コロナウイルス感染症の影響により休業した方で、休業により給与が著しく下がった方について、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額(社会保険料の等級)を給与が下がった月の翌月より改定可能となりました。(以下、「コロナ特例改定」と呼びます。)
通常の社会保険料の改定のタイミング
通常、社会保険料の改定のタイミングは、大きく分けて2つあります。1つ目は、定時決定。毎年4月・5月・6月に支払った給与の総支給額を平均して、標準報酬月額の等級表に当てはめ決定します。この定時決定の社会保険料改定のタイミングは、9月分からです。2つ目は、随時改定。基本給や家族手当、役職手当等の固定的賃金の変動があった場合、変更のあった月から3カ月間の平均し、従前の標準報酬月額と比較して2等級以上差があった場合、4カ月目に社会保険料を改定します。
今回のコロナ特例改定は、この随時改定によらず、4カ月待たずして給与が下がった月の翌月から改定可能となりました。
コロナ特例改定の要件
コロナ特例月変は、次の3つの条件を全て満たす場合に行うことが可能です。
(1)事業主が新型コロナウイルス感染症の影響により休業(時間単位を含む)させたことにより、急減月(令和2年4月から7月までの間の1か月であって、休業により報酬が著しく低下した月として事業主が届け出た月)が生じた方
(2)急減月に支払われた報酬の総額(1か月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて、2等級以上下がった方
※ 固定的賃金(基本給、日給等単価等)の変動がない場合も対象となります。
(3)特例による改定を行うことについて、本人が書面により同意している方
コロナ特例改定のメリット・デメリット
メリットとしては、4カ月待たずして給与が下がった月の翌月より社会保険料が下がることです。通常の随時改定の要件とは違い、固定的賃金の変更がなくともコロナ特例改定が発動できます。新型コロナウイルスにより、売上等に影響を受けた方も多くいらっしゃると思いますので、すぐに社会保険料が下がる特例は利用した方がいいと思います。このコロナ特例改定は、従業員だけでなく役員も対象となりますので、新型コロナウイルスの影響により役員報酬を下げた場合もコロナ特例改定をすることができます。
逆に、デメリットは標準報酬月額が下がることにより、傷病手当金・出産手当金の金額が下がります。傷病手当金・出産手当金は、支給開始日前1年の期間の標準報酬月額の平均より算出されるため、直近で給付を受ける可能性がある方は、注意が必要です。また、将来もえる年金額も下がります。年金額は標準報酬月額に応じて決定されます。そのため、コロナ特例改定の要件の一つに、「本人同意」が求められています。
このコロナ特例改定は、任意の手続きであるため、本人同意が取れた方のみ手続きをすることが可能です。
申請手続きおよび申請に必要な書類
月額変更届(特例改定用)に申立書を添付し、管轄の年金事務所に郵送してください。(窓口で直接受け付けることも可能です。)月額変更届(特例改定用)と申立書は、日本年金機構のホームページよりダウンロードすることが出来ます。通常の月額変更届・算定基礎届は事務センターへ郵送しますが、この特例改定は管轄の年金事務所へ郵送となりますのでご注意ください。
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