】改めて、貴社の就業規則、大丈夫ですか?

厚生労働省に寄せられる労働相談件数は高止まりし、顧問先企業様から私共への労務トラブルに関するご相談も後を絶ちません。就業規則はいざトラブル等が発生した際は有効な手段となりますので、改めて本コラムで解説いたします。

1.就業規則とは

まず、就業規則とは企業にとってどのような位置づけでしょうか?概ね以下のような役割や法的な意義があります。

  • ・常時10人以上の従業員を使用する事業場では必ず作成しなければならない
  • ・作成したものは、従業員の過半数を代表する者からの意見聴取、労働基準監督署への届出、社内周知が必要
  • ・適正に作成、周知された就業規則は労働契約の内容となる
  • ・記載内容は、法律上義務づけられた項目と、任意で定めるべき項目が存在する
  • ・義務はないが契約の観点から書いておいた方がいいことが多数存在する
  • ・労働基準法等の法令に反する内容は無効となる
  • ・特に企業側の裁量が認められやすい人事権については明記しておいた方がいい

2.就業規則の使い方

では就業規則をどのように活用するのが望ましいでしょうか。就業規則の記載内容は労働契約の内容となるので、企業の意志を反映しておきたいところです。また、滅多に発生しないようなトラブルや非違行為についても、服務規律や懲戒事由等に記載しておくことが重要で、約款的に企業を守る活用のしかたをお薦めいたします。

また、企業のルールを規定しているわけなので、担当者や経営者が労務管理上で判断を行う場合に、マニュアル的な位置づけとして活用することも多々あります。この場合、法改正や社内ルールの変更等が最新の状態に更新されていないと誤った判断を行うことになるので注意が必要となります。

3.よくあるご相談と勘違い

日頃寄せられるご相談の中で、就業規則の位置づけや重要性を誤って認識されている場面も見受けられますので、事例をご紹介しておきます。

Q:「当社は1日の所定労働が7時間ですが、1時間残業した場合の時間外手当は25%割増にしなくていいですよね?」

A:これは就業規則にどう定められているかにより異なります。労働基準法では少なくとも1日8時間を超えた部分から25%割増としなくてはならない旨が定められていますが、これは最低基準であるだけで、労働契約の内容として、就業規則にそれを上回る1日7時間を超えた部分から25%割増とする旨が定めてあれば、8時間を超えていなくても25%割増で支払わなければなりません。

Q:「不祥事を起こした従業員がいるのですが、ペナルティとして役職を外してもいいですよね」

A:人事労務管理上、降職・解職を行う根拠として、2つのパターンが存在します。それぞれ対応方法が異なりますので以下のとおりご注意ください。

(1) 「懲戒処分」としての降・解職

就業規則の懲戒処分に規定されていることが必要です。それ以外に、不祥事の内容と処分の重さ、同種事案の処分との均衡等を踏まえて、初めて降・解職が可能となります。就業規則に定めがなければ、降・解職を行うことはできません。

(2) 「人事権」としての降・解職

不祥事は降・解職を判断する1要素であり、原則としては企業の人事考課のルールに従うことになります。不祥事の内容によっては、役職者としての適格性が担保できない場合もあり、その場合は、降・解職も可能となります。降・解職のタイミングについても人事考課のルールに基づき行うこととなります。この場合も、就業規則に人事考課の結果として降・解職が行われる旨を定めておくことをお薦めします。

—-

以上が、改めて考える就業規則のお話となります。就業規則に記載されている内容は従業員との契約内容となります。企業主導で労務管理を進めるには、就業規則の整備が重要となりますので、今一度、自社の就業規則をご確認ください。お悩みやご相談等ありましたら、お気軽にお声がけください。

この記事を書いている人 
-Writer-

小山健二

特定社会保険労務士

【略歴】昭和51年生まれ、東京都出身。駒澤大学文学部社会学科卒業。 専門商社、人材サービス業を経て社会保険労務士法人で勤務し、令和4年にエフピオへ入社。

人事労務のみならず、経営企画、仕入、営業部門での多様な経験から、全体最適の視点で業務遂行を心がけています。事業会社、専門家双方でM&Aプロセス、DD実務経験がある。

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