】~ハラスメント調査の注意点-その②~<よつば総合法律事務所 弁護士村岡つばさ>

前回のコラムでは、ハラスメント調査の重要性、難しさ、よくある落とし穴についてお話させていただきました。今回は、被害を申告してきた労働者へのヒアリング・初動対応の注意点についてお話します。

「ハラスメントの被害を受けた」という被害申告を労働者から受けた場面を想定します。 この場合、会社として注意すべきポイントは、以下の6つと考えています。

①被害申告者から話を聞く場を早急に設ける

「相談を受けたけどどう対応してよいか分からず、放置してしまった」というミスは多いです。ハラスメントの問題は、時間の経過とともに被害が拡大する傾向があります。「相談したのに何もしてくれなかった」とならないよう、相談にはすぐに対応する必要があります。

②決めつけを絶対にしない

前回のコラムでお話しました。「またこの労働者が言っている」「この労働者は被害妄想だ」等と決めつけをしてしまうと、適切な対応はできません。

③裏付けとなる証拠は早期に提出してもらう

証拠の有無は、今後のヒアリング・調査の進め方に大きく関わります。証拠があるのであれば、最初のヒアリングの時点がヒアリング直後には、証拠を提出してもらいたいところです。

④「事実」と「評価」を分け、「事実」のみを聞く

「私はハラスメントを受けた!」というのは評価です。「私は、〇月〇日に、上司である〇〇さんから、〇〇という発言を受けた」というのは事実です。評価は、前提となる事実関係が確定した上で行うものであり、ヒアリングの時点では「事実のみ」を聞くことが重要です。

⑤被害申告者の意向(調査意向・その他の意向)を必ず聞く

「話は聞いてもらいたいけど、調査はしないで欲しい」「匿名で調査して欲しい」等、被害申告者の意向はとても重要です。被害申告者の意向により、今後の調査の進め方が大きく変わります。被害申告者の意向に反した調査等を行ったことが理由で、会社に慰謝料の支払が命じられたケースもあります。

⑥場合によっては一時的な対応(勤務場所の変更等)も検討する

特に、深刻なハラスメント事案で、被害申告者の健康に不調を来しているときは、本人の意向も確認した上で、一時的な対応として、勤務場所の変更等を検討する必要があります。

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村岡つばさ

よつば総合法律事務所 企業法務部門責任者・弁護士

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【略歴】早稲田大学法学部・慶應義塾大学法科大学院卒業
千葉では珍しく「企業法務案件」のみを扱う弁護士。
会社側の労働案件が専門分野。
社労士会、税理士会、弁護士会等各種団体で研修・セミナー講師を多数担当。
税理士法人レガシィより
「これだけやっておけば良い!パワハラ防止法対策」
「使用者側目線 労災対応ノウハウ」セミナー発売中

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ハラスメント ,
   

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