】~ハラスメント調査の注意点-その①~<よつば総合法律事務所 弁護士村岡つばさ>

先日、私が講師を務めたセミナーが、税理士法人レガシィ様より発売されました。「失敗しないハラスメント調査 事実を引き出すヒアリングの極意」と、何とも大層なタイトルですが、今回から複数回に亘り、ハラス メント調査を行う際の注意点についてお話します。

1 なぜハラスメント「調査」が重要か?

ハラスメントの相談があった場合、通常は、①ハラスメントの調査(ヒアリング)、②調査を踏まえた事実認定、③認定された事実を踏まえた法的評価(ハラスメントに当たるかの判断)、④③を前提とした事後対応(被害回復の措置、行為者への処分等)という流れで進むこととなります。

この流れからも明らかなように、「ハラスメント」の事案のすべての出発点は「調査」(ヒアリング)です。すなわち、ヒアリングが十分に、適切になされなければ、その後の事実認定も、評価も、事後対応も、全て崩れてしまうのです。

2 ハラスメント調査の難しさ

ハラスメントの調査は非常に難しいです。弁護士でも非常に対応に苦慮します。

特に、「私が話したことは内緒にして欲しいけど、調査・処分を行って欲しい」という意向が被害申告者にある場合には、調査の仕方を含めて工夫が必要です。また、限られた時間で、本人から「重要な事実関係」を聞き取ることも非常に難しいです。事実関係や時系列が上手く整理できていないことも多く、時間をかけてヒアリングをしても、結局重要な事実を聞き出すことはできなかった、というケースもあります。

3 ハラスメント事案のよくある「落とし穴」

次回からは、具体的なヒアリング時の注意点をお話しますが、今回は導入として、「ハラスメント事案のよくある落とし穴」を最後にお話しします。パターンはいくつかありますが、①被害者が元々問題の多い社員や、被害者意識が強い労働者で、被害申告をまともに取り合わなかったパターンや、②被害申告者の話だけを鵜呑みにして、ハラスメントと決めつけてしまったパターンが多いです。私は、ハラスメント調査の一番の落とし穴、陥りがちなミスは、「決めつけ」にあると考えています。フラットな目線で調査を行うことが非常に重要となります(が、これがなかなか難しいのは良く理解しています。)。

この記事を書いている人 
-Writer-

村岡つばさ

よつば総合法律事務所 企業法務部門責任者・弁護士

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【略歴】早稲田大学法学部・慶應義塾大学法科大学院卒業
千葉では珍しく「企業法務案件」のみを扱う弁護士。
会社側の労働案件が専門分野。
社労士会、税理士会、弁護士会等各種団体で研修・セミナー講師を多数担当。
税理士法人レガシィより
「これだけやっておけば良い!パワハラ防止法対策」
「使用者側目線 労災対応ノウハウ」セミナー発売中

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ハラスメント ,
   

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