】新型コロナウィルスへの対応について

新型コロナウィルスについての報道が連日行われ、その被害拡大が心配されていますが、企業としての対応方法につきご質問をいただくことが増えてきました。そこで、今回はその対応の仕方を検討するにあたり、Q&A方式で解説をさせていただきます。

★労働基準法関係

Q1.新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合の留意点は?

A.賃金の支払の必要性の有無等については、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案すべきものですが、法律上、労働基準法第26条に定める休業手当を支払う必要性の有無については、一般的には以下のように考えられます。(以下は現時点の状況を基にしており、今後の新型コロナウイルスの流行状況等に応じて変更される可能性があります。)

(1)労働者が新型コロナウイルスに感染したため休業させる場合

新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。

(2)労働者に発熱などの症状があるため休業させる場合

新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労 働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱います。一方、例えば熱が37.5度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

(3)武漢市を含む湖北省から帰国した労働者等の新型コロナウイルスに感染した可能性のある労働者を休業させる場合

医療機関の受診の結果、職務の継続が可能である労働者について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

Q2.新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者について、一律に年次有給

休暇を取得したこととする取扱いは、労働基準法上問題はないか。病気休暇を取得したこととする場合はどうか。

A.年次有給休暇は原則として労働者の請求する時季に与えなければならず、使用者が一方的に取得させることはできません。事業場で任意に設けられた病気休暇により対応する場合は、事業場の就業規則等の規定に照らし適切に取り扱うことになります。

Q3.新型コロナウイルスの感染の防止や感染者の看護等のために労働者が働く場合、

労働基準法第33条第1項の「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合」に該当するか。

A.今回の新型コロナウイルスが指定感染症に定められており、一般に急病への対応は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、労働基準法第33条第1項の要件に該当し得るものと考えられます。災害その他避けることのできない事由により臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合には、36協定によるほか、労働基準法第33条第1項により、使用者は、労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な限度の範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。なお、労働基準法第33条第1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。

★安全衛生法関係

Q1.労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業禁止の措置を講ずる必要はあるか。

A.令和2年2月1日付けで、新型コロナウイルス感染症が指定感染症として定められたことにより、労働者が新型コロナウイルスに感染していることが確認された場合は、感染症法に基づき、都道府県知事が就業制限や入院の勧告等を行うことができるので、それに従う必要があります。ただ、労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業制限の措置については対象となりません。

関連ブログ

感染者拡大するなか、新型コロナウイルス関連対応について<社会保険労務士 小林沙奈江>

2021年末から新型コロナウイルスの新たな感染の急拡大が始まっています。コロナ関連の対応について、毎日のようにご相談頂いております。もし従業員様やそのご家族が感染・濃厚接触等の疑いが発生した時、会社…

続きを読む

コロナ休業と労務相談

コロナ休業も長くなりますと新たな労務トラブルの相談が増え始めました。その中で最近よく相談をいただく内容をご紹介します。 コロナ休業と副業 「コロナで休業を行って雇用調整助成金を受給してい…

続きを読む

2022年の年末到来、改めてコロナ労務問題について考えてみました<社会保険労務士津田千尋>

このコラムが配信される頃、12月に入り、街はイルミネーションに彩られていることでしょう。今回のコラムは、この3年間でのコロナ労務対応について、考えてみたいと思います。 リモートワークへ…

続きを読む

お問い合わせは、下記よりお願いいたします。

弊社の記事の無断転載を禁じます。なお、記事内容は掲載日施行の法律・情報に基づいております。本ウェブサイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。社会保険労務士法人エフピオ/株式会社エフピオは本ウェブサイトの利用ならびに閲覧によって生じたいかなる損害にも責任を負いかねます。

タグ:
36協定 , コロナウイルス , コロナ関連 ,
   

前のページへ戻る

関連記事

2024.04.15
東京商工リサーチ掲載記事
有休休暇の賃金計算~日によって勤務時間がバラバラのときは?~<社会保険労務士 間庭基也>
2024.04.01
東京商工リサーチ掲載記事
『社員研修の目的と企画・導入』について<社会保険労務士 廣瀬潤>
2024.03.04
東京商工リサーチ掲載記事
週10時間勤務で、雇用保険加入へ ~ダブルワーク時の労災保険、雇用保険、社会保険の取り扱いはどうなるの?~<社会保険労務士 浅山雅人>
2024.02.28
東京商工リサーチ掲載記事
マイナンバーカードの健康保険証 利用されてますか?<社会保険労務士 伊藤美由起>
2024.02.05
東京商工リサーチ掲載記事
労災で休業が発生した場合の休業補償のイロハ ~知っておくべき、基礎知識~ <社会保険労務士 小野田春奈>
2024.01.22
東京商工リサーチ掲載記事
雇用保険=失業保険にあらず。人材育成に活用を!<社会保険労務士 松井 碧城>
2023.12.25
東京商工リサーチ掲載記事
建設業だったら協定さえ結んでおけば、月45時間超えて残業させても大丈夫なんですよね?<コンサルタント 松岡藍>
2023.11.27
東京商工リサーチ掲載記事
「会社分割」における労働契約の承継<社会保険労務士 小山健二>
2023.11.20
東京商工リサーチ掲載記事
社長の金庫に入れられた就業規則は有効か?<社会保険労務士 石川 宗一郎>
2023.10.30
東京商工リサーチ掲載記事
年収の壁・支援強化パッケージの落とし穴~この2年間、年収130万円超えても被扶養者になれる?は誤解~<社会保険労務士 浅山雅人>