】2022年の年末到来、改めてコロナ労務問題について考えてみました<社会保険労務士津田千尋>

このコラムが配信される頃、12月に入り、街はイルミネーションに彩られていることでしょう。今回のコラムは、この3年間でのコロナ労務対応について、考えてみたいと思います。

リモートワークへの理解が進んだが、中抜け問題が発生し、予期せぬ深夜残業が発生した

幸か不幸か、リモートワークについて、労使ともに、この3年間で理解が進んだ印象です。しかしながら、リモートワークを規程として運用し、問題なく上手に使えている企業ばかりかというと、多くの会社からリモートワークに関するご相談をいただきます。その多くが、「中抜け」に起因する問題です。「中抜け」とは、「一定程度労働者が業務から離れる時間」のことで、リモートワークで発生しやすい事象、とされています。たとえば、ちょっと銀行で用事を済ませてくる、役所で書類を提出する、保育園・幼稚園への送り迎えをする、などの時間のことです。『使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、自由に利用することが保証されている場合は、終業時刻の繰り下げなどの所定労働時間の変更は可能です。ただし、あらかじめ就業規則に規定しておくことが必要です。また、企業が所定労働時間を一方的に変更することはできない。』、とされています。(厚生労働省 テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドラインより)

さて、そもそも、リモートワークだから、中抜けが許され、会社の出勤者には許されないものなのでしょうか?また、リモートワークであれば、事業主は中抜けは許可しないといけないのでしょうか?どちらもNOです。中抜けを行う場合は、事前に適切な方法で申請を行い、許可を受けて可能とするようにしたほうが、労働時間管理の面からも適切です。また、中抜けを許可することと、始業終業の時刻を前後させることは、イコールではありません。中抜けを許可されたとしても、所定労働時間の変更を従業員側が自由に行えるわけではありません。中抜けをしたから、深夜までの労働時間になった、というのも、中抜けと所定労働時間の勤務の管理を、無申請・無許可での運用にしている場合に多く見られる問題です。

メンタル不調の訴えが増えた

この3年間で、メンタル不調の訴えが増えています。いまや傷病手当金申請の32.96%がメンタルヘルス不調の件数となっています。(全国健康保険協会管掌健康保険 現金給付受給者状況調査報告(令和3年度)より)コロナの前から多かったのですが、さらにこの数年でも3割を超える数値になっております。

傷病手当金 メンタルヘルス不調等の経年件数割合

また、年代別に傷病手当金の支給件数の割合をみていると、若年者(20歳~39歳)のうち、傷病手当金を受給している方の半数以上がメンタルヘルスを理由に休職しています。下記の表を見るとよくわかりますが、20歳~39歳までは、精神および行動の障害(メンタルヘルス不調)の割合が50%を超えている、という状況があります。

傷病手当金支給件数の割合【年代別】20~59歳

メンタルヘルスに関する社内相談窓口

メンタルヘルスの会社相談窓口は、まだまだ設置件数が半数程度ではありますが、近年その重要性から、設置を検討する傾向が高くなっています。

労働安全衛生法の第69条により、労働者の心の健康を守るため、事業者は継続的かつ計画的に努力することが求められています。

ただし、会社相談窓口を設置する際には注意も必要で、①相談しやすい(なんでも話せると安心できる)環境を整えることと、②プライバシーに十分に配慮し、事実確認の徹底と、情報の漏洩に十二分に注意が必要などの注意点が複数あります。メンタルヘルスに関する社内相談窓口を検討するの際には、信頼できる労務のスペシャリストに相談いただいたうえで、働きやすい職場環境の構築を進めていきましょう。

この記事を書いている人 
-Writer-

津田千尋

社会保険労務士

  • youtube

【略歴】千葉県千葉市出身。東京農工大学工学部生命工学科卒業。
卒業後は、理化学機器業界のとある輸入商社に入社し、国内外の商品の仕入・販売・営業・サポートまで幅広く経験。平成27年2月に浅山社会保険労務士事務所(現エフピオ)へ入社。

労務に関する相談対応、就業規則の策定、各種手続き業務、研修講師などを担当。

関連ブログ

Withコロナ時代、働き方改革ならぬ、変わらなければならない働き方!?

 5月25日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が全面解除されて、1か月が経過しました。市中の車両の交通量は以前に比べて増えているものの、経済活動の正常化はまだまだ遠く感じます。さて、Wi…

続きを読む

新型コロナウィルスへの対応について

新型コロナウィルスについての報道が連日行われ、その被害拡大が心配されていますが、企業としての対応方法につきご質問をいただくことが増えてきました。そこで、今回はその対応の仕方を検討するにあたり、Q&A…

続きを読む

感染者拡大するなか、新型コロナウイルス関連対応について<社会保険労務士 小林沙奈江>

2021年末から新型コロナウイルスの新たな感染の急拡大が始まっています。コロナ関連の対応について、毎日のようにご相談頂いております。もし従業員様やそのご家族が感染・濃厚接触等の疑いが発生した時、会社…

続きを読む

コロナ休業と労務相談

コロナ休業も長くなりますと新たな労務トラブルの相談が増え始めました。その中で最近よく相談をいただく内容をご紹介します。 コロナ休業と副業 「コロナで休業を行って雇用調整助成金を受給してい…

続きを読む

お問い合わせは、下記よりお願いいたします。

弊社の記事の無断転載を禁じます。なお、記事内容は掲載日施行の法律・情報に基づいております。本ウェブサイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。社会保険労務士法人エフピオ/株式会社エフピオは本ウェブサイトの利用ならびに閲覧によって生じたいかなる損害にも責任を負いかねます。

タグ:
コロナウイルス , コロナ関連 , 労務管理 ,
   

関連記事

2024.04.01
東京商工リサーチ掲載記事
『社員研修の目的と企画・導入』について<社会保険労務士 廣瀬潤>
2024.03.04
東京商工リサーチ掲載記事
週10時間勤務で、雇用保険加入へ ~ダブルワーク時の労災保険、雇用保険、社会保険の取り扱いはどうなるの?~<社会保険労務士 浅山雅人>
2024.02.28
東京商工リサーチ掲載記事
マイナンバーカードの健康保険証 利用されてますか?<社会保険労務士 伊藤美由起>
2024.02.05
東京商工リサーチ掲載記事
労災で休業が発生した場合の休業補償のイロハ ~知っておくべき、基礎知識~ <社会保険労務士 小野田春奈>
2024.01.22
東京商工リサーチ掲載記事
雇用保険=失業保険にあらず。人材育成に活用を!<社会保険労務士 松井 碧城>
2023.12.25
東京商工リサーチ掲載記事
建設業だったら協定さえ結んでおけば、月45時間超えて残業させても大丈夫なんですよね?<コンサルタント 松岡藍>
2023.11.27
東京商工リサーチ掲載記事
「会社分割」における労働契約の承継<社会保険労務士 小山健二>
2023.11.20
東京商工リサーチ掲載記事
社長の金庫に入れられた就業規則は有効か?<社会保険労務士 石川 宗一郎>
2023.10.30
東京商工リサーチ掲載記事
年収の壁・支援強化パッケージの落とし穴~この2年間、年収130万円超えても被扶養者になれる?は誤解~<社会保険労務士 浅山雅人>
2023.10.16
東京商工リサーチ掲載記事
年収の壁(106万円の壁、130万円の壁)を改めて考えてみました<社会保険労務士 廣瀬潤>