】たくさん残業させたら産業医と面談しないといけないって本当ですか? <コンサルタント松岡藍>

みなさん、こんにちは。

社会保険労務士法人エフピオの松岡藍です。

さて、今回のご質問もざっくりとしているのですが、いわゆる長時間労働者への医師による面接指導制度のお話になります。

■監督官から

先日、過重労働による健康障害防止(長時間労働があった際の会社の対応やそもそも長時間労働をさせないようにする)について労働基準監督署の監督官とお話する機会があり、長時間労働者への医師による面接指導制度があること自体知らない会社がとても多いということを耳にしました。

今回のご質問では「何となくそんな制度があることは知っているけれどよくわからない」「わからないからそのまま実施しない」という流れに行きそうなパターンで、監督官の言っていることにつながるのだろうと思います。監督官はこの面接指導制度があることを会社および従業員に周知させるだけでも過重労働による健康障害防止につながるので社労士事務所でも顧問先にぜひ呼び掛けてくださいとおっしゃっていました。

せっかくの機会なので、医師の面接指導制度についての周知を兼ねて今回のご質問の答えを考えていこうと思います。

■長時間労働者への医師による面接指導制度

長時間労働者への医師による面接指導制度とは、月80時間を超えて時間外および休日労働をおこなった労働者が医師の面談を受けたい旨の申出をした場合には、医師による面接指導を実施しなければならないという制度で、こちらは会社の安全衛生法上の義務となっています。なお今回は、研究開発事業従事者や高度プロフェッショナル制度適用者といった特殊な方たちは除いてより一般的なお話で進めていきます。

この制度は、脳・心臓疾患発症が長時間労働との関連性が強いとされている医学的知見に基づき、健康障害発生リスクが高まった労働者への措置を講じることをその趣旨としています。この趣旨からすると申出のない従業員に対しても医師の面談指導実施を努力義務としていますし、45時間を超える時間外・休日労働をおこない、かつ健康への配慮が必要な従業員への措置をおこなうことが望ましいとされています。  とすると、確かに「たくさん残業」で「面談」は必要ですが、「たくさん」にはきちんと法律上の基準があって「月80時間を超えて」、かつ残業させただけではなく本人からの申出があって初めて義務になるというのが正確ですね。

■労働時間の把握

月80時間を超えた場合に必要ということは、もちろん労働者が月何時間の時間外および休日労働があるのかを会社はきちんと把握していなければなりません。把握した上で、80時間超えてしまった従業員には労働時間を通知しなければならないですし、80時間を超えていない従業員に対しても要求があれば開示しなければなりません。

少し脱線してしまうのですが、月80時間を超えているということは法定時間外労働が60時間を超えている可能性がありますが、来年令和5年4月1日からは中小企業でも60時間を超えた法定時間外労働時間分については、50%以上の率で割増賃金を支給しなければならなくなります。こちらも踏まえて、労働時間の把握が上手にできていないという会社は今のうちに労働時間を把握するスキームを考えておかないと知らず知らずのうちに残業代の未払いや面接指導義務違反という法律違反をしていたということになりかねません。

■産業医

では話を質問に戻しまして、「産業医」の面接指導でなければならないのか?ですが、「医師」としか規定されていないので必ずしも産業医である必要はありません。産業医の選任義務のある事業場(常時50人以上の労働者を使用する事業場では必須)でない場合は特に、どうすればよいのかというご質問をよくいただきます。実は安全衛生法上定められている国の援助の一部として位置づけられている地域産業保健センターがあります。こちらで面接指導の相談ができたり、健康診断結果の医師からの意見聴取も可能だったりするので困った場合は一度相談してみるのもよいかもしれません。

■おわりに

今回のご質問内容は従業員の健康リスクにつながるテーマなので、法律上の義務だから実施するというのももちろんですが、会社にとって大事な従業員が欠けてしまいかねないので、従業員が心もからだも健康で働ける環境を整えることは最終的には会社の利益につながるお話だなと思いました。

この記事を書いている人 
-Writer-

松岡藍

コンサルタント

【略歴】千葉県佐倉市出身。千葉大学法科大学院専門法務研究科卒業。

平成30 年に浅山社会保険労務士事務所(現エフピオ)へ入社。
労務に関する相談対応、就業規則の策定、研修講師、助成金の申請等の業務を担当。お客様の期待を超える提案をしてエフピオのファンになってもらえるよう日々心がけています。

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タグ:
労働時間 , 労務管理 , 残業 , 産業医 ,
   

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