【東京商工リサーチ掲載記事】ハラスメント対策は企業の急務~ハラスメントのない職場づくりを目指して~ <社会保険労務士 小林沙奈江>
先日、厚生労働省から「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」の結果が公表されました。
「個別労働紛争解決制度」は、労働者と会社との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、迅速に解決を図るための制度で、「総合労働相談」、都道府県労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があります。
その中で、民事上の個別労働紛争における相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の全項目で、「いじめ・嫌がらせ」の件数が引き続き最多となっています。
中でも、民事上の個別労働紛争の相談件数は、86,034件(前年度比8.6%増)で10年連続最多と、個別労働紛争においていじめ・嫌がらせの相談件数が増えていることがわかります。
増加するハラスメント防止対策研修の依頼
2022年4月より、パワーハラスメント防止措置が中小企業に義務化となり、企業規模問わず、ハラスメント対策は急務となりました。
4月以降、弊社に依頼のあったハラスメント防止対策研修は実に10件以上と、企業運営にとってハラスメント対策は必須となっています。
対策が義務化となっている職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置は下記の通りです。
◆事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
②行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
◆相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
◆職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
⑦事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧再発防止に向けた措置を講ずること
◆そのほか併せて講ずべき措置
⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
⑩相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
◆パワーハラスメントについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止
ハラスメント防止対策研修で伝えていること
研修のご依頼を受ける際、すでにハラスメントと呼べるような行為をしている方がいるため、自覚し改めてほしいという理由でご依頼いただくケースがあります。
残念ながらこういった方々は管理職等の上の立場の方がほとんど。
自身がハラスメントを行っているという認識はないことが多いです。
研修では、厚生労働省のハラスメントのポータルサイト「あかるい職場応援団」に掲載されている資料や動画を使用し、ハラスメントの行為がどういったものであるかを認識していただき、グループワーク等を通してどういう言動を心掛けていくべきかを話し合っていただきます。
特に私が伝えているのは、「お互いの尊重、理解」。
職場に限らず、どの環境でもいえることですが、コミュニケーションを取る上で大事なのは、お互いの尊重、理解だと思っています。
あるお客様からの研修の依頼で、事前に資料を見ていただいた際に、「うちの会社はお互いの尊重が足りないんだよね」と仰っていたことがとても印象に残っています。
ハラスメントのような“マイナス”の行動は、被害者の方に一生の傷を負わせます。
マイナスの行動ではなく、“プラス”の行動として「してくれたこと」も一生忘れない出来事です。
企業運営において、プラスの面を部下や後輩まで連綿と繋ぎ、プラスの行動を社風として残していただきたいと思っています。
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