】企業のハラスメント対策は喫緊の課題です!

厚生労働省が令和1年6月26日に発表した「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」において、相談件数の25.6%は、「いじめ、嫌がらせ」でトップとなっており、「解雇(10.1%)」「労働条件の引き下げ(8.4%)」「退職勧奨(6.5%)」と比較しも群を抜いており、この傾向はこの数年間続いております。

このように労務管理上で最優先課題として取り組むべきは、「ハラスメント」対策となっています。そこで、ハラスメント対策を講じるうえで大切な7つのポイントを解説します。

1.トップのメッセージ

・ハラスメントは、企業のトップから全従業員が取り組む重要な会社の課題であることを明確に発信しましょう。

・ハラスメントの防止が、なぜ重要なのか、その理由についても明確に伝えましょう。

■ トップのメッセージの効果

「職場のハラスメントはなくすべきものである」という方針を、トップのメッセージの形で明確に打ち出すことが望まれます。

組織の方針が明確になれば、ハラスメントを受けた従業員やその周囲の従業員も、問題点の指摘や解消に関して発言がしやすくなり、その結果、取組の効果がより期待できます。

2.ルールを決める

・罰則規定の適用条件や処分内容、また、相談者の不利益な取扱いの禁止などを明確に定めましょう。

・就業規則を変更した場合は、従業員への説明会や文書の配布なども忘れず実施しましょう。

■ ルールの内容

就業規則その他の職場の服務規律等を定めた文書で、ハラスメント行為を行っていた者については、懲戒規定等に基づき厳正に対処する旨を定めます。

3.社内アンケートなどで実態を把握する

・アンケートでの実態把握は、対象者が偏ることがないようにしましょう。

・従業員向けの相談窓口を設置している場合は、アンケートと合わせて必ず相談窓口を紹介しましょう。

・アンケート以外の方法として、評価面接など個人面談の際に自己申告項目に入れるなど、複数の方法で行うことも有効です。

■ 実態把握の効果

アンケート調査は、ハラスメントについて職場で話題にしたり、働きやすい職場環境づくりについて考える貴重な機会にもなります。

4.教育をする

・教育のための研修は、可能な限り全員が受講し、かつ定期的に実施することが重要です。中途入社の従業員にも入社時に研修や説明を行うなど、漏れなく、全員が受講できるようにしましょう。

・研修内容には、トップのメッセージ内容を含めるとともに、会社のルールの内容、取組の内容を加えると効果的です。

■ 教育のための研修の内容

予防対策で最も一般的で効果が大きいと考えられる方法が、研修の実施です。研修は、可能な限り対象者全員に受講させ、繰り返して実施するとより効果があります。

5.社内での周知・啓蒙

・組織の方針、ルールや相談窓口などについて、積極的に、周知に取り組みましょう。

■ 周知の方法

ハラスメントの防止に向け、組織の方針、ルールなどとともに、相談窓口やその他の取組について周知することが必要です。

ハラスメントの定義、対策講じる目的などを盛り込む

― 人権の尊重、働きやすい職場づくり、組織の活性化、人材の維持/定着率の向上など

― 組織の停滞、従業員相互間の不信感の増大、人材の流出、業績への影響など

6.相談や解決の場を提供する

・従業員が相談できるように相談窓口を設置しましょう。

・相談しやすくするために、相談者の秘密が守られることや不利益な取り扱いを受けないことを明確にしておきましょう。

■ 相談窓口の設置

従業員が相談しやすい相談窓口を設置し、初期の段階で気軽に相談できるしくみを作りましょう。

7.再発防止のための取組

・再発防止策は予防策と表裏一体です。予防策に継続的に取り組むことが再発防止につながります。

・取組内容の定期的検証・見直しを行うことで、より効果的な再発防止策の策定、実施に取り組みましょう。

■職場環境の改善のための取組

ハラスメントが起きてしまう要因に職場内のコミュニケーションや人間関係の希薄化、長時間労働の恒久化が考えられます。このような状況が考えられる場合は、職場内のコミュニケーションの強化や長時間労働対策を行うなど、職場環境を改善することがハラスメントの予防にもつながります。

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ハラスメント , 退職勧奨 ,
   

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