】雇い止め予定(有期労働契約の満了予定者)は雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金の対象にしてよいのか?<社会保険労務士 石川宗一郎>

社労士の石川です。再び延長された雇用調整助成金ですか、長期化する休業に事業所の閉鎖や店舗の閉鎖が余儀なくされるケースが出てきました。そこで問題になるのが退職予定者は雇用調整助成金の対象にしてよいのかという点です。

そこで今回のコラムでは良く相談される退職予定者と雇用調整助成金の関係を整理しました。

退職予定者と雇用調整助成金の関係

雇用調整助成金の対象者が退職意思表示をした場合や解雇、退職勧奨を受けた場合は、その翌日(=退職届や解雇/勧奨通知を受けっとた日の翌日)から雇用調整助成金の対象から外されます。
(★退職予定者以外は対象となります。ただし解雇や退職勧奨等は雇用維持要件をクリアできなくなるので助成率がダウンします)

根拠は下記雇用調整助成金の支給要領の通り、(0303a・ロ)

0303a 対象労働者
助成金を受けようとする事業所における雇用保険の被保険者をいう。ただし、次のイからハまでのいずれかに該当する者を除く。

イ 休業等の日の属する判定基礎期間の初日の前日又は出向を開始する日の前日まで同一の事業主に引き続き被保険者として雇用された期間が6か月未満である者

ロ 解雇を予告された者、退職願を提出した者又は事業主による退職勧奨に応じた者(当該解雇その他離職の日の翌日において安定した職業に就くことが明らかな者を除く。)

ハ 日雇労働被保険者

雇用調整助成金支給要領別ウィンドウで開く(令和3年7月28日改正)

雇い止め(契約満了予定者)と雇用調整助成金

ここまでは支給要領(マニュアル)に記載されているのでわかるのですが、雇い止めが予定される従業員は雇用調整助成金の対象になるか明確な記載がありません。

整理すると・・・
①無期契約社員に対して8/10に解雇通知をした場合

→解雇される従業員について、8/11以降の休業は雇用調整助成金の対象外となる。

②従業員が8/15に退職届を提出した場合

→退職する従業員について、8/16以降の休業は雇用調整助成金の対象外となる。

③2020年9月1日から2021年8月31日までの有期労働契約を締結していた従業員について 契約更新時に「次の契約で最後にする」と通知した場合

→支給要領に駄目とは記載されていないが・・・?

③を具体的な日付にすると
2020/9/1~2021/8/31有期労働契約(更新条項あり「更新することがある」)
2021/9/1~2022/8/31有期労働契約(更新条項なし「本契約をもって最終とする」)
→2021年9月1日以降も雇用調整助成金は受給できるのか?

労働局に問い合わせをしてみたら・・・

支給要領に明確な記載がないため、労働局に問い合わせを行ってみました。

回答が2,3転していたのでオフィシャルな回答が欲しいと問い合わせること2週間後・・・

有期労働契約の更新時に「次回は更新しない」旨を明記しても、

その時点では雇調金の対象外にはならないとのことでした。
ただし、雇止め通知を出した時点からは対象外になるということでした。

なお雇い止め通知を受けていても退職翌日からグループ企業への転籍が決まっているような場合は、雇用調整助成金の対象にできます。

・・・これでスッキリと申請ができます。

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退職勧奨 , 雇用保険 , 雇用調整助成金 ,
   

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