【社労士のコラム】裁判員制度と裁判員休暇<社会保険労務士 津田千尋>
2023年ことしもいよいよ、新年度到来、4月に突入しました。
街には、新学期を迎えて初々しい面持ちの小学生、少し緊張気味の新入社員が入社式に臨もうと集まっている朝の光景、を目にすることが多く、毎年この時期は気持ちがリフレッシュされます。
昨今、就業規則のご相談の中で、公民権行使の時間と、裁判員休暇の制度について、お問い合わせをいただく機会がありましたので、今日のブログでは、裁判員制度について少し、記載をしてみたいと思います。
裁判員制度って?
いつからはじまったのか、と改めて調べてみると、平成21年5月21日から裁判員制度がスタートしています。もう、15年目になるのですね。
国民の中から選ば絵れた6人の裁判員が刑事裁判に参加することで、国民のみなさんが刑事裁判に参加することにより,裁判が身近で分かりやすいものとなり,司法に対する国民のみなさんの信頼の向上につながることが期待されています。
裁判員に選べらた場合の審理の日数はどれくらい?
企業側としては、従業員が裁判員に選ばれた場合、どれくらいの日数がかかるのか、どれくらいの期間会社を休むことになるのか、気になるところです。
最高裁判所の資料で、令和3年度の裁判員等経験者に対するアンケート調査結果報告書によると、約8割が5日以内の審理日数でした。対象事件を審理の実日数別にみると、「3日」が33.7%を占め、最も多い実日数となっています。次いで、「4日」が20.8%、「1日又は2日」が16.5%となっており、「6日以上」は16.3%、「5日」は12.6%となっています。
審理の実日数
参考データ:裁判員等経験者に対するアンケート調査結果報告書(令和3年度)
https://www.saibanin.courts.go.jp/vc-files/saibanin/2022/r3-a-1.pdf
裁判員に選ばれた場合は?
裁判員制度の趣旨は、前述のとおり、特定の職業や立場の、特定の職業や立場の人に偏らず、広く国民が参加する制度です。裁判員になることは法律上の義務で、理由なく辞退することはできません。また、仕事が忙しいという理由だけでは、辞退できません。ただし、「とても重要な仕事があり、自分で処理しないと著しい損害が生じるおそれがある場合」など、法律や政令で定
められた理由に該当すると裁判所から認められれば辞退することができます。
従業員が裁判員に選ばれたら、会社は拒否できるの?
できません。
裁判員制度に関して、従業員が裁判員、補充裁判員、裁判員候補者のいずれかになった場合で、従業員からその職務に必要な時間を請求された場合、事業主は拒んではいけません。
労働基準法 第7条
(公民権行使の保障)
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。 但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。
裁判員休暇制度の導入状況
従業員が裁判員等に選ばれた場合、裁判員等の職務に必要な休暇の取得が、法律で認められています(労働基準法第
7条)が、その休暇を有給休暇とするか無給休暇とするかは各企業の判断に委ねられています。
裁判員として刑事裁判に参画することは「公の職務の執行」です。従業員が裁判員としての職務を行うための休暇を取
得したこと等により、解雇その他不利益な取り扱いをすることは禁止されています(裁判員の参加する刑事事件に関する法律第100条)。
令和4年度「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査をみると、
・裁判員休暇制度を導入している企業は約4割、
・導入しておらず、予定もない企業も役4割、
・導入予定・検討中の企業が約2割、
となっています
(資料)令和4年度「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査
そして、この裁判員休暇における給与の取扱いについては、有給が6割、となっていますが、
さきほどの導入状況については2,600社程度からの回答なのに対して、こちらの回答数は1,000社程度となっているので、実態はもう少し異なるのではないかな、というのが、個人的な印象です。
さて、みなさまの感覚と、現在の状況はマッチしていましたか?ニュース等で、裁判員裁判が取り上げられることがありますが、なかなか全体像が見えてこない印象があります。今後も、日常にまつわる、制度と働く企業の中でのお悩みを取り上げていきたいと考えています。
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