】あれ?ねんきん定期便のレイアウトが変更されている!ねんきん定期便の変更からみる、高齢者雇用と年金制度改革

1.平成31年度送付分の「ねんきん定期便」のレイアウトが一部変更に

 日本年金機構のホームページによると、平成31年度送付分(平成31年4月以降)のレイアウトが一部変更になっています。下記は、毎年届く、ハガキタイプのねんきん定期便の50歳未満の方のレイアウト(オモテ面)です。真ん中のグラフ表示が追加され、「年金の受給開始時期は、60歳から70歳まで選択できます。※年金受給を遅らせた場合、年金額が増加します。(70歳を選択した場合、65歳と比較して最大42%増)との記載があります。50歳以上の方へ届くねんきん定期便(ハガキタイプ)でも、節目年齢と呼ばれる35歳、45歳、59歳のときに封書で届くねんきん定期便でも、同様の表示が追加され、「年金受給を遅らせると、年金額が増える」という情報を強調したつくりになっています。

 ただし、ご注意いただきたい点もあります。メリットとして年金が増える部分が強調されていますが、下記のようなデメリットもあります。こちらは、節目年齢(35歳、45歳、59歳)に送られてくる封書タイプに同封されているパンフレットには記載がありますが、ハガキタイプには情報としての提供はありません。また、特別支給の老齢厚生年金(60歳から65歳までの間で、厚生年金の加入期間が1年以上ある方が受け取れる、男性は昭和36年4月1日生まれまで、女性は昭和41年4月1日生まれまでの特例)については、受け取りを遅らせるという制度自体が存在しないので、請求をしないと、受け取れない、という点にも注意が必要です。

≪ねんきん定期便に同封されているパンフレットより一部抜粋≫

2.未来投資会議において70歳までの雇用の努力義務を発表、2020年の国会に改正案を提出予定

 国が年金受け取りを遅らせるメリットを強調するには、背景があります。5月15日の未来投資会議において、「人生100年時代を見据えた多様な就労・社会参加の実現に向けて」ということで、政府は、希望する高齢者が70歳まで働けるようにするための高年齢者雇用安定法改正案の骨格を発表しています。現行法においては、①定年の廃止②定年年齢の引き上げ③継続雇用制度導入(グループ企業内)などでの再雇用のどれかの措置を講じることで、65歳までの希望者全員の雇用を義務付けています。今回発表されたのは、65歳から70歳までの部分について、前述の①から③に加えて、④グループ企業以外への再就職実現⑤フリーランス契約⑥起業実現⑦社会貢献活動への従事(⑤から⑦については企業が支援を行う)が企業の選択肢として挙げられています。労使での十分な話し合いの上で企業は多様な選択肢の中から採用する措置を提示し、個々の高齢者との相談を経て適用(努力義務)としています。これらの改正案は、来年2020年の通常国会に提出される見込みですので、今後も注目していきたいと思います。

3.厚生年金の加入年齢の延長、在職老齢年金の見直しも検討されている

 現在5年に1回行われる、将来の公的年金の財政見通し(財政検証)が行われています。厚生労働省は、この財政検証の中で、現在70歳まで加入できる厚生年金の加入期間を70歳よりも長くした場合の年金財政への影響も試算しています。現在70歳まで加入できる厚生年金の加入期間を70歳以上に延長するということは、将来受け取れる年金額は増えるというメリットはあります。ただし、企業にとっては保険料の半分を負担することとなり、この保険料負担は決して軽くありません。また、加入期間の延長だけではなく、働きたい高齢者の雇用促進にむけて、在職老齢年金制度の見直しも検討されています。在職老齢年金制度とは、働いて一定の収入がある場合には、年金を減らす制度のことで、厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受ける方(70歳以上の在職者も含みます)は、一定額以上の収入がある場合には年金額が支給停止(全部または一部)となるものです。働く(働きたい)意欲をそがれてしまう、という批判も強いものの、制度を廃止した場合の財源確保が難しいという一面もあります。

 これまでも、さまざまな改革、変更が行われてきた高齢者雇用制度と年金制度ですが、今後も、大きな変更が予想されます。高年齢者雇用安定法改正案、年金改革の関連法案、どちらも来年2020年の通常国会に提出される見込みです。今後も注目しながら、お伝えしていきたいと思います。

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