【東京商工リサーチ掲載記事】コロナ禍で明るみになった2つの問題
(1)複雑な雇用調整助成金申請が簡略化
制度が煩雑で申請が困難と大バッシングを受けている雇用調整助成金ですが、5月下旬の簡略化によりようやく使える制度になった感があります。
雇用調整助成金の制度の概要を説明しますと、今回のようなコロナ禍により休業を余儀なくされた企業が従業員に対し休業手当を支給する場合、その何割かを国が補填するという制度です。概要を聞きますとそれほど複雑な制度に思えないのですが、いざ申請をしようとなるとその複雑さ、難解さ、意味不明さに皆さん心が折れてしまうような内容でした。
なぜそのような制度になっているか、雇用調整助成金は過去不正受給で逮捕者も出していることがあり、ありとあらゆる面で不正受給を防ぐ内容となっています。そのため必要な書類を揃えるだけでも大変な労力を要し、管理面が脆弱な小規模企業では帳簿や書面が不足していて申請ができない事態となっていました。
こういった事情が多くの批判を呼び、4月から5月にかけて徐々に簡略化されていきました。皮肉なことに何度も簡略化のため制度を変えてしまったため、新しい情報と古い情報が乱立し、さらに混乱するような状況となりました。
5月下旬になり大幅に情報が整理され厚生労働省のサイトも必要書類がワンクリックでダウンロードできようやく申請できる状況が整いました。4月時点で申請を諦めていた企業も簡略化された今なら申請をできる可能性があります。特に従業員が概ね20名程度以下の小規模事業者は申請ハードルが大幅に緩和されています。一度諦めていた企業も確認してみることをおすすめします。
(2)シフト制アルバイトの休業手当の支給義務は?
前項の雇用調整助成金を並んで相談が多いのが、「シフト制アルバイトに休業手当の支給義務があるのか?」です。休業手当とは、労働基準法第26条に規定されており、会社側の都合により労働者を休業させた場合、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の手当(休業手当)を支払わなければならないというルールです。例えば雇用契約書に「週3勤務」と記載してあった場合、1週に1回もシフトに入れなかった際には3日分の休業手当の支給義務が生じます。
問題となるのはこの所定労働日がハッキリと取り決められていないようなケースです。例えば、雇用契約書に「勤務日はシフトによる」とだけ記載されており、かつ長期休店などでシフトが作成されていないような場合です。所定出勤日に休ませるから休業手当の支給義務が生じるのですが、その所定出勤日がないという状態になってしまいます。
このような出勤日が特定されていないような働き方をしている場合、休業手当の支給義務があるかないか、厚生労働省も具体的な指針などを出していません。企業ごとに対応差が出ているのが現状です。過去の出勤実績から仮想のシフトを作成し休業手当を支給しているケースもあります。また一部ではアルバイトの休業手当を巡って労働争議化している話も耳にします。このような疑義がある休業手当であっても、可能な限り支給すべきと思いますが、いつまで続くかわからない休業に躊躇する企業も少なくありません。
前例がない問題が多く、社労士としても回答に困ることが少なくありません。それでも社労士の知識が多くの企業の役に立てばと思います。
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