【弁護士解説】~労災事故発生時の会社の注意点-その③~<よつば総合法律事務所 弁護士村岡つばさ>
前回は、労災発生後の初動対応についてお話させていただきましたが、今回は、被災労働者の労務管理についてお話します。
①中々復職しない従業員の対応
・被災労働者の労務管理に関し、最も多い相談が「労働者が一向に復職しない」というものです。
労災保険は、労働者保護を主眼に置いており、治療費・休業補償の打ち切り等は基本的に行われないため、治療・休業期間が長期に亘ることも多いです。
・対応は非常に難しいですが、定期的に労働者と連絡を取り、治療状況を確認するとともに、必要に応じて主治医との面談(ただし労働者の同意は必要です)を行うことをお勧めしています。
あまりにも不自然な場合等には、調査会社に私生活上の行動の調査を依頼することもあったりします。
・なお、業務中の労災事故の場合、労基法19条1項により、休業期間中+休業期間経過後30日間は解雇が禁止されているので、注意が必要です。
②労災治療終了後の就労拒否について
・労災治療が終了した後は、基本的には、労災発生前の仕事に戻ることとなりますが、体調面等を理由に元の仕事ができないとして、労働者が就労を拒否することもあります。
・この場合、仕事内容の変更や配置転換等により、労働者が現実的に就労できる他の仕事がないかを、まずは検討する必要があります。この検討を行わないまま解雇をすると、会社として行うべき配慮を行っていないとして、解雇無効と判断される可能性が高いです。
③メンタルヘルス事案の注意点
・うつ病等のメンタルヘルス事案では、労働者が労災と主張しているものの、会社としては労災ではないとして、労使が真っ向から対立することがあります。
・このような場合、会社としては、労災ではなく(私傷病)休職の制度を活用することとなります。そして、休職期間が満了したものの復職できない場合には、就業規則に基づき自然退職として扱うこととなります。 ・もっとも、後にこれが労災と判断されると、会社の行った自然退職処理は、労基法が禁止する労災期間中の解雇に準じるものとして、無効とされてしまいます。そのため、「本当に労災に当たらないのか?」という事実確認と検証を、慎重に行う必要があります。
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