【社労士のコラム】求人と年間休日数~105日未満の求人が不人気の訳~<社会保険労務士 石川宗一郎>
社労士の石川です。顧問企業様から求人の内容についてご相談を受ける機会が多く、特に最近は年間休日数を増やすかどうかの相談が多くなっています。中小企業の社長も、採用難で採用が上手くいかず、求職者が何を求めているか真剣に考え始めています。
面白い統計があります。次の表は中小企業庁が発表している「中小企業白書」より抜粋していますが、上段が「求職者が採用時に重視すること」、下段が「中小企業が重点的に伝えた情報」のグラフです。
中核人材の採用に当たって、中小企業が重点的に伝えた情報と求職者が重視した企業情報
資料:中小企業庁委託「中小企業・小規模事業者の人材確保・定着等に関する調査」(2016年12月、みずほ情報総研(株))
- 注1. 複数回答のため合計は必ずしも100%にはならない。
- 注2. 中小企業について、直近3年間で中核人材の採用活動を行った者を集計している。
- 注3. 中小企業においては中核人材の採用時に重点的に伝えた自社の情報があるとして回答した項目、求職者においては求職時に重視した企業情報があるとして回答した項目について表示している。
中小企業庁「2017年中小企業白書」より引用
求職者の回答は「仕事内容・やりがい」「給与・賞与の水準」「就業時間・休暇制度」と続きます。
悲しいかな、どんな経営理念や技術力を誇っても、大多数の求職者は最初の3つが希望の水準に達していないと見向きもしてくれないということです。
年間休日数の状況
給与水準や仕事のやりがいについて気に掛ける社長は多いけど、労働時間や休日についてはあまり気にしないという社長が多い印象をもっていましたが、最近は変わりつつあるようです。そこで実際のところ、どのくらいの年間休日日数で求人票を出しているのか調べてみました。
令和4年9月8日現在、ハローワークで公開されている求人票(※)は17,722件でした。その求人票での年間休日数の分布は上記グラフの通りです。(※千葉県 フルタイム勤務(正社員)で絞り込み)
休日水準と社労士の個人的所感
①年間休日105日未満
・・・求人票で戦えない。採用の実態は社員や知り合いの紹介などが多いと思われる。
(なお年間休日87日は1日7.5時間で変形労働時間制、96日は1日7時間45分で変形労働時間制を採用している可能性が高い)
②年間休日105日
・・・完全週休二日制(ただし祝日などは出勤日)
1日8時間労働で法定週40時間。職安で採用をしたいなら最低105日は必須。
③年間休日110日
・・・政府統計の平均値(110.5 日)
令和3年就労条件総合調査(厚生労働省)の統計による1企業あたりの年間休日は平均110.5日(前年は109.9日)ようやくこれで平均値!
④年間休日120日前後
・・・完全週休二日制+土日祝日
事務職、ホワイトカラーを採用するなら、この水準が一般的。120日前後あれば休日が少ない理由で求職者に避けれらる可能性はほぼないと思われる。
⑤年間休日125日以上
・・・年間休日120日にプラスお盆や年末年始休日が長いなど会社独自休日が設定されている。中堅・大手企業など福利厚生面が良い場合が多い。
年間休日120日を目指して
今後、現役世代(=生産年齢人口=15歳以上65歳未満の人口)は急激に減ります。
将来人口の予想
- 2050年に日本の人口は約1億人まで減少する見込み。
- 今後、生産年齢人口比率の減少が加速。
うちは年休●日は無理、初任給●円は無理という企業は採用で詰む可能性が高くなります。続々と先手を取り始めた会社は確実にあり、出遅れた会社は益々求人に苦しみ縮小・退場を余儀なくされると思います。30年で人口が2,000万人減ると予想されるペースは、いくら外国人を雇用してもカバーできないでしょう。
アフターコロナで景気がどちらに転ぶか予想し難いタイミングですが、ここ数年の採用活動における勝敗は、今後何年もの事業を左右するように思います。
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