【弁護士解説】~ワクチン接種と労務トラブル~<よつば総合法律事務所 弁護士 村岡 つばさ>
よつば総合法律事務所 弁護士の村岡つばさです。
1 はじめに
9月、10月に、エフピオさんと「コロナで多発!労務トラブル予防対策セミナー」というテーマで、コラボセミナーを行います。
同セミナーでは、ここ最近ご相談いただくことが非常に多い、「ワクチン接種と労務トラブル」について色々とお話させていただく予定です。
今回は、セミナー告知を兼ねて、ワクチン接種と労務トラブルについて、簡単にお話させていただきます(ご興味のある方は、是非セミナーにもご参加ください!)。
2 ワクチン接種を強制できるか
残念ながら、従業員にワクチン接種を強制すること(義務付けること)は、現状の法律・運用を前提とすると、できないという回答になります。現行法では、ワクチン接種は義務ではなく、国民1人1人が判断できると定められており、企業においても、義務付けることはできません。
3 「推奨」なら許されるか
単に推奨に留まる程度であれば許容されます。ただし、これが事実上の強制と評価できるような場合には、いわゆる「ワクチンハラスメント」と判断される可能性があり、注意が必要です。「推奨」と「事実上の強制」の線引きは何とも難しいのですが、ワクチンを接種しなかった場合の不利益を仄めかしたり、他の従業員がワクチン接種をしていることを殊更に強調し、ワクチン接種を迫るような場合には、事実上の強制と評価される可能性が高いです。
4 ワクチン接種拒否を理由とする解雇は?
上記2、3からもお察しいただいているかと思いますが、ワクチン接種を義務付けることができない以上、ワクチン接種拒否を理由とする解雇もできません。正確には、解雇ができないのではなく、解雇自体が無効と判断される可能性が極めて高い、ということになります。
諸外国においては、特定の職種を対象に、ワクチン接種を拒否したことを理由に解雇を行う動きが広がっています。つい先日も、ギリシャで、ワクチンを接種していない医療従事者7000名!が解雇されたとの報道もありました。今後、政府の動き次第で、このような解雇が許容される可能性はありますが、現行法の下だと、中々難しいと言えるでしょう。
お問い合わせ
よつば総合法律事務所千葉事務所 弁護士 村岡つばさ
TEL:043-306-1110(エフピオの法律コラムを見た、とお伝えください)
〒260-0015 千葉県千葉市中央区富士見1丁目14番地13号
千葉大栄ビル7階(※柏にも事務所がございます。)
村岡 つばさ
よつば総合法律事務所
弁護士
【略歴】
埼玉県戸田市にて出生
私立鎌倉学園中学校/ 高等学校卒業
早稲田大学法学部卒業 慶應義塾大学法科大学院卒業
司法試験合格後よつば総合法律事務所へ入所。
企業法務を積極的に取り組み、特に労務分野に明るく、
千葉県社労士会で講演活動を行うなど精力的に活躍中。
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