【東京商工リサーチ掲載記事】社会保険の適用拡大~いよいよ週20時間勤務のパートタイマーも社会保険加入へ~<社会保険労務士 浅山雅人>
社会保険の適用拡大が2022年10月から中小企業にもスタートします。
来年の10月からとはいえ、企業にとって社会保険料負担は大きなもの。健康保険・厚生年金の保険料は支払い給与の約30%で、企業と従業員が折半(約15%)することになります。
したがって、未加入のパートタイマーが社会保険に加入した同時に15%の昇給することと同じ意味となります。
本コラムでは、パートタイマーへの社会保険適用拡大についての説明させていただき、中小企業経営者の皆様が、経営に大きな影響を及ぼす問題について早くから取り組まれるきっかけになればと期待しております。
1.パートタイマーの社会保険加入のルール
次の(1)と(2)の条件をいずれも満たした場合に、社会保険加入義務となります。
来年10月より対象者が広がり、3年後には再拡大となります。
多くの中小企業が、社員との労働時間比べて、4分の3未満は未加入というルールによって適用を免れていた状況が一変することになります。(下線部が変更箇所)
【現在】
(1)被保険者(社会保険加入者)の総数が常時500人を超える事業所
(2)次の被保険者の要件のすべてを満たした場合
①週所定労働時間が20時間以上
②賃金の月額が88,000円以上
③雇用期間が継続して1年以上見込まれること
④学生でないこと
【2022年10月より】 下線部が変更
(1)被保険者(社会保険加入者)の総数が常時100人を超える事業所
(2)次の被保険者の要件のすべてを満たした場合
①週所定労働時間が20時間以上
②賃金の月額が88,000円以上
③雇用期間が継続して2カ月超えて見込まれること
④学生でないこと
【2024年10月より】
上記の100人の要件が、50人へ引き下げとなり、対象事業所がさらに拡大
表にまとめると、次のとおりとなります。
対象 | 要件 | 現行 | 2022年10月から | 2024年10月から |
事業所 | 事業所の規模 | 常時500人超 | 常時100人越 | 常時50人越 |
短時間 労働者 | 労働時間 | 週の所定労働時間 20時間以上 | 変更なし | 変更なし |
賃金 | 月額88,000円以上 | 変更なし | 変更なし | |
勤務時間 | 継続して1年以上 使用される見込み | 継続して2か月を 超えて使用される見込み | 継続して2か月を 超えて使用される見込み | |
適用除外 | 学生でないこと | 変更なし | 変更なし |
2.ここに注目!!「1年以上の勤務期間要件」が撤廃される
これまで社会保険加入の要件となっていた「1年以上の雇用期間が見込まれる」という要件は、さまざまな働き方や実務上の取扱いの現状に鑑みて、撤廃されることとなりました。改正法の施行後は、フルタイム勤務の労働者と同様に「2ヶ月を超えて雇用の見込みがあること」となります。
ただ、雇用期間が2ヶ月以内でも条件次第で社会保険の遡及適用対象になります。これはどういうことかというと、雇用開始時に、雇用期間が2ヶ月未満(あるいは2ヶ月であった場合も)の契約であっても、「2ヶ月を超えて雇用の見込みがある」と判断される可能性があるということです。
雇用契約書や就業規則などにその契約が更新される、または更新される可能性があると明示されている場合や、同様の契約で雇用されたほかの従業員が更新などにより2ヶ月以上雇用されたという実績がある場合は、2ヶ月以上の雇用が見込まれるとして扱われます。
たとえば、雇用契約書において
契約更新:会社の業務上の必要および、勤務実績を考慮して更新する。
更新の判断は、次のとおりとする。
①健康状態(健康診断書の提出を求めることあり)②契約期間満了時の業務量③勤務成績、態度④能力⑤会社の経営状況⑥従事している業務の進捗状況
というような定めがある場合は、たとえ2ヶ月未満の雇用契約を締結していても、「2ヶ月を超えて雇用の見込みがある」と判断されるということです。
そのため、雇用開始時に2ヶ月以上の雇用は見込まれないとして社会保険に加入させず、後に上記の条件に該当するとわかった場合には、2年を時効として、契約時に遡って社会保険に加入させるよう年金事務所から指導される場合があります。
社会保険手続きのアウトソーシング情報
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