【社労士のコラム】派遣社員の同一労働同一賃金② 労使協定方式の一般賃金とは<社会保険労務士 石川宗一郎>
労使協定方式を採用する場合は統計に基づく「一般賃金」と自社派遣社員の給与テーブルを比較して、自社の方が高いことを協定に記載しなければなりません。
※前回の記事はこちら
「一般賃金」≦「自社の派遣社員の賃金テーブル」
まず一般賃金は、「①基本給・賞与・手当等」「②通勤手当」「③退職金」の3つの要素で構成されます。
- 統計で求めた「一般賃金」の「基本給・賞与・手当等」を自社の「基本給・賞与・手当等」が以上となっているか?
- 統計で求めた「一般賃金」の「通勤手当」を自社の「通勤手当」が以上となっているか?
- 統計で求めた「一般賃金」の「退職金」を自社の「退職金」が以上となっているか?
- 原則的には1から3を個別に比較していきます。ただ通勤手当や退職金制度がないケースもあるので合算して比較する方法もあります。(合算については別記事にします)
これらは「賃金構造基本統計調査」「職業安定業務統計」などの公的統計をベースに算定されており、毎年7月ごろに厚生労働省のサイトにアップされます。
①基本給・賞与・手当等
1. 賃金構造基本統計調査による職種別平均賃(時給換算)「通達別添1」
令和元年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)
無期限雇用かつフルタイムの労働者について、(所定内給与+特別給与÷12)÷所定内労働時間で時給換算したものを特別集計
2.職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算) 「通達別添2」
職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算)
職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算) 「通達別添2」の例
上記のように2つの代表的な統計調査があり、そこから派遣する業務に合致するものを探します。例えば賃金構造基本統計調査のプログラマーは「時給1,253円」(令和3年適用)なので、自社の派遣プログラマーに1,253円以上の時給を払うルールをつくらないとならないということになります。
ただし、1,253円は基準年(0年)の統計であるため、経験を持ったプログラマーは横軸の経験年数に相当する部分と比較しなければなりません。「基準値に能力・経験調整指数を乗じた値」3年では1,623円となります。つまりプログラマー経験3年程度だと時給1,623円が下限になることになります。
さらに地域差を考慮する必要があります。
3.地域指数
職業安定業務統計による地域指数で掛け算する必要があります。
令和元年度職業安定業務統計による地域指数
例えば千葉県の場合は地域指数が「105.5」になるので、千葉県の賃金水準は全国平均に比べて105.5%となっています。
したがって先程の「経験3年・プログラマー・千葉県内へ」派遣する場合、1,623円に地域指数の105.5%をかけて1,713円(円未満切り上げ)が最終的な一般賃金となります。
(本当はこれに「通勤手当」と「退職金」の考慮をするのですがそれは後編で説明します)
執筆 社会保険労務士 石川 宗一郎
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